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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

 かと言って燃え尽きることもない。火に包まれたままである。その魂はどうなっているのだろうか、あまりのことに麻痺して自我の意識までもなくなったのか。

(これ以上にないというくらい苦しんで、苦しんで……)

 貴志フィチは想像力を働かせて、ぞっとしてしまう。火に包まれても燃え尽きず、ひたすら苦しめられるというのは、どんな感じであろうか。しかも、その火は自ら発したものである。

(そもそも何のために)

 源龍げんりゅう羅彩女らさいにょ龍玉りゅうぎょく虎碧こへき聖智ソンチ、そして穆蘭ぼくらん香澄こうちょうは得物を振るってどす黒い何かと対峙しこれと渡り合っているが。払っても払ってもきりがない。

「わああああーーーー!!!」

「ひいいいいーーーー!!!」

 突然どす黒い何かから叫び声がしたかと思えば、そのどす黒い何かは途端に様々に色を変えて、中まで見えるではないか。そこにはあの人狼と画皮の中身が。

狗野郎いぬやろう!」

蚯蚓野郎みみずやろう!」

 源龍と羅彩女は一瞬呆気に取られて、得物をぶつけた。塗炭の苦しみにまみれという何とも言えない表情を見せ、人狼と画皮の中身を包んだ何かは泡のように弾けて、消失した。

 かと思えば、

「開華開華開華ぁーーーー!!!」

「王座王座王座ぁーーーー!!!」

 などという叫びまでした。なんと様々に色を変え明滅する何かの中に、あの劉賢りゅうけん光燕世子クァンヨンセジャがいるではないか。

 たまらず聖智はぎょっとして動きが止まってしまった。これもまた塗炭の苦しみにまみれたという表情を浮かべ、何とも言えない気持ちにさせられるものだった。

「ふん、ここまで来て苦しんでやがるのか。さまあ見ろってなもんだぜ!」

「そう、そう。下々の庶民を踏みつけにした罰さ!」

 さすがに源龍と羅彩女は容赦がない。

「ああ、もう!」

 龍玉は咄嗟に聖智をかばって光燕世子の何かを青龍剣で斬り払い、虎碧は赤虎剣で劉賢の何かを斬りえば。これらも泡が弾けるようにして消え去ってしまった。

「……!」

 聖智はすっかり固まってしまって、無言のまま羽を伝って下りてゆき。虎碧がこれに寄り添い、迫る何かを赤虎剣で払って。龍玉もまた援護に青龍剣を振るった。

 という時、

「乗りな!」

 と鵰の背の穆蘭がやってきて。虎碧は聖智の背を押し、穆蘭はその手を引いて鵰に乗せて。世界樹のふもとまで降下して、貴志らに託した。

 聖智はへたり込んで、もう何も出来なさそうだった。それにマリーが寄り添う。

(道を踏み外すとは、かくも恐ろしいものなのか!)

 気丈なはずの聖智のこの有様に、貴志は心からの怖気おぞけを禁じ得なかった。 

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