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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

 大樹、世界樹は枝も伸び葉も茂り。大きな傘のようでもあった。その大きな傘の陰は、涼やかで心地よい。

「この木陰でのんびり過ごせるのが、どれだけ幸せだったか」

 コヒョはしみじみと言う。リオンとマリー、香澄こうちょうは何も言わずとも静かに頷く。

 すぐには何もなさそうで、それぞれ用心しつつ心身を休める。身体を動かしたり伸ばしたりして、動作の確認もする。すぐに戦えるように。

しんに行くと思ったんだがな」

 源龍げんりゅうは言う。辰で鄭拓ていたくとかいう奴と戦わされるのかと思っていたが、あにはからんや世界樹の草原に連れてこられた。

 鳳凰とくまたかは地に足を着け、羽を休めている。

 平時ならばのんびりできそうな雰囲気だが。今は嵐の前の静けさだった。

「おい、オレらはここで何をするんだ!?」

 そう世界樹に言うが、反応はない。時には声を伝える世界樹だが、今は黙して語らず。

 源龍にしてみれば、蜘蛛の糸の網につかまって何も出来なかったというのは屈辱だから。その雪辱を果たしたかった。

 今なら束の間の休息でも出来そうな感じだったが。源龍も羅彩女らさいにょも、龍玉りゅうぎょく虎碧こへきも、聖智ソンチもそうしなかった。

 第六感的なものが休んではならぬと告げる。杞憂であればよいのだが。貴志フィチは、

「よいしょっと」

 などとのんきな声を出しながら地面に座る。

「休める時に休まなきゃ」

 などと言う。そのそばに、香澄。彼女は何も言わなかったが、貴志のそばで腰かけ、目を閉じて瞑想していた。またそのそばでリオンとコヒョ、マリーが休み出す。三人は素人なので立て続けの戦いではさらに疲労を覚えて、束の間でも休みたがるのは仕方のない話ではあった。

「海鮮チゲ食いかけで異世界行かされた恨みは忘れねーぞ」

 そんなことを、源龍は世界樹に向かって言った。やはり食事は最後まで素直に楽しんでいただきたいものだった。羅彩女も、

「そう、そう」

 と相槌を打つ。

「まあ、まあ。食いもんの恨みは深いねえ」

 龍玉も耳と九つの尾も一緒に相槌するように揺らし、賛同の意を示す。虎碧は何も言わないが、苦笑していた。聖智も、わからんではないがと思いつつ、苦笑。

 それぞれにはそれぞれの気持ちがあるものだった。

「これ終わったら、またみんなで一緒にチゲを食べましょう」

 貴志は愛想よく言う。

「賛成賛成ー」

 羅彩女と龍玉が、珍しく声を合わせて意見の一致を見せた。

 その時だった。

「海鮮チゲといわず、我に着けば美食を存分に味わわせてやるぞ」

 などという声がする。

 座った者は咄嗟に立ち上がって、身構える。

「世界樹?」

「世界樹が言ってるの?」

「そんな……」

 リオンとコヒョ、マリーは絶句する。そう、声は確かに世界樹からした。他の面々も聞いた。

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