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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

「炎と氷の交互攻撃とか、生き物相手なら気にしなくてよさそうだね」

「そうね、どんどん行きましょう」

「うん、行こうか!」

 言うや龍玉は鳳凰の背から跳躍し、金の羽を飛び伝い悪い鳳凰の天下に迫り。虎碧も同時に並んで迫る。

 見よ、悪い鳳凰の天下は、鶏冠に鵰のふんが付着し、嘴も割れ目が入った無様さ。幻獣、聖獣としての威厳などあったものではない。

 そこに加え、穆蘭と鵰から必死に逃げ回り。凋落とはこのことかと思わざるを得なかった。

「で、ほんとに落ちろ!」

 龍玉は青龍剣を振るえば、青い炎が迸り出て、悪い鳳凰の天下に迫る。鋼鉄の火龍とは違い、これに当たればひとたまりもなく焼かれてしまいそうである。

 それに続いて、虎碧の放つ赤い氷。さらに、背後からは天光北斗弾が迫る。

「ぶおおおおおお~~~~~」

 疲れ切ってしまったのか、避けようとするもその動作は鈍く。青い炎に赤い氷、天光北斗弾をもろ受けに受けて。無残な悲鳴と、どおんという、耳をつんざく爆発音が轟き。

 噴煙が悪い鳳凰の天下を包む。

 どうだ!

 と、多くの人々は期待を込めて噴煙が晴れるのを待ったが。あにはからんや、悪い鳳凰の天下は、身体に焦げ目のある無残な姿とは言えまだ生きて、翼をばたつかせて逃げようとする。

「なんでしぶとい!」

 穆蘭は歯噛みする。手応えはあったのに。龍玉と虎碧も、眉をひそめる。

「やばいね、あたしらもぎりぎりなのに」

「すんでのところで、私たちの体力も気力も途切れそう」

 期待外れの結果が効いてしまったか、ふたりして弱気なことを漏らしてしまう。

「……」

 貴志も絶句し、もちろん他の面々も絶句する。

「だめなのか」

「どうすりゃいいんだよちくしょう」

 などと言った声が出始める。また恐慌に陥るのか。地上の面々も気力が持たなさそうであった。

(そうか、やはり)

 こんな時にもかかわらず、やけに勘が冴える聖智は、筆を握りしめ。意を決して鳳凰の背から跳躍し、金の羽を伝い、龍玉と虎碧と並んだ。

 どうするのかと考え聞くいとまもない。聖智は筆を持ち、虚空に「人」と書いた。書いて、そうすれば、虚空に浮かぶ人の文字。

「世を統べるは天下にあらず!」

 聖智は人の文字に向かって叫んだ。龍玉と虎碧、穆蘭は無言で成り行きを見守っている。

「お、お、おおお!」

 人の文字は大きくなり、悪い鳳凰の天下に迫る。三人は素早い動作で金の羽を伝い筆の天下から出でし善い鳳凰の背に戻る。その背は優しく、金の草原のように三人を迎え入れて乗せた。

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