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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

 そこに虎碧の赤虎剣の放つ赤い氷がつぶてとなって鋼鉄の火龍に迫る。中には槍のように鋭いのもあり、これにやられれば胴を貫かれるだろう。

 だが鋼鉄の火龍は巧みにかわし。かわしながら、紅蓮の炎を吐き出し反撃する。

 紅蓮の火焔、青い炎とぶつかれば青と紅蓮交じって紫になって爆発して、轟音とともに煙は四散霧消し。赤い氷とぶつかれば、これも赤い爆発をし。氷の破片と火焔の破片がともに空で四散霧消する。

 それは、身の危険がなければたいした見世物でもあった。 

 貴志らが落ち着かせたのも功を奏して慶群の街中は落ち着きを取り戻し。慌てる改め急いで避難する者がいる一方で、そこにとどまり空の戦いを見物して声援を送る者とに分かれている。

「見物するならそれ相応の危険があると心得よ!」

「これこそ自己責任だぞ!」

 と、貴志と瞬志らは言って回る。

 避難せよと言っているのにそれを聞かずに戦いの見物をするとなれば、これは言っておかなければならないことだった。自分の意志でとどまって見物して、何かがあった時のことまで責任は持てない。

(皆さん、頼みます!)

 貴志は心の奥底のそのまた奥底から勝利を祈った。

 筆の天下から出でた鳳凰は戦いを見守るように上空を旋回する。が、ただ見るだけではない。鋼鉄の火龍の動きを見て、隙あらば我が身を突進させてぶつけようとし、龍玉と虎碧を援護した。

 それが功を奏してか、鋼鉄の火龍も避けきれずぶつけられて、よろけて、動きが止まる。

 筆の天下から出でた鳳凰はすぐに離れて。そこに青い炎と赤い氷が迫った。

 青い炎に包まれたところに、赤い氷がぶつけられて。耳をつんざく火龍の悲鳴がくうを揺らした。

「やった!?」

 龍玉と虎碧はその様子をうかがうが。鋼鉄の火龍はまだ平気そうで、風を切って上昇し、炎と氷から逃れる。

「まだだめみたいね」

 これは我慢比べのような戦いにもなるかと虎碧は覚悟を決めたが。それでも早く決着をつけたいところで、ちらっと下界を見た。自分たちは多くの人々の人生を背負って戦っているのだ。

 そうこうしているうちに、聖智は貴志と対面する。

「どうしました?」

「筆をお貸しくだされ」

「筆を?」

「何かわかりませんが、筆を持っていた方がいいような気がして」

「……。わかりました」

 貴志は懐から筆の天下を取り出し、渡す。聖智は慇懃に礼をして、懐に納めて。再び金の羽を伝って空へと駆け上がってゆく。それを見て、

「天女さまだ!」

 と、ありがたがって合掌する者や跪く者もいた。

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