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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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我画願望

 一方、上空では。

 二羽の鳳凰がもつれ合っていたのが、悪い鳳凰の天下は隙を見て逃げ出すが穆蘭と鵰に追いつかれてこれと対峙し。もう一羽の良い鳳凰は、やむなく離れて、龍玉と虎碧、聖智のそばまで戻り。

 三人は咄嗟にその背に戻った。

「あたしらはこいつに当たるよ!」

 龍玉は鳳凰の背で叫んで、得物の青龍剣を構えた。虎碧も同じくして。聖智はその様子を固唾を飲んで見守る

 龍玉と虎碧は念じれば、それぞれの得物、赤虎剣からは赤い氷、青龍剣からは青い炎が迸り出て、鋼鉄の火龍に迫る。

 鋼鉄の火龍は迫る青い炎と赤い氷を目にし、咄嗟に紅蓮の火焔を放射すれば。赤い氷と青い炎と紅蓮の火焔が上空でぶつかり合い。爆発し、くうを震わす爆音が轟く。

(なんという)

 人智を超えた業だ。聖智は我が身を鳳凰の背に預け、戦況を見守るしかないと、邪魔にならぬよう静かに控えるしかなかった。

 穆蘭と鵰は、悪い鳳凰の天下と対峙する。

 鳳凰の天下は逃げるのを邪魔され、そうとう狂おしいく悶えているようだ。

「お、お、お!」

 などと意味不明な呻き声を上げたかと思えば、ふたたび嘴から灰色の霧が放出されて、それは無数の泡となって穆蘭と鵰に迫る。

 無数の泡からは手が伸びる。

「お、お、女女女!」

「やや、柔肌ぁ!」

「鳥だ、焼いて食ってやる!」

 などなどといった不気味な声もする。

「度し難し!」

 穆蘭は眉をしかめてつぶやけば、鵰は嘴を開き。なんと速度高めに飛び様に、無数の泡を伸びる手ごと飲み込んでゆくではないか。

 そしてそのまま悪い鳳凰の天下に迫る。

「な、なんだと!」

 などと、明らかに動揺していた。

 迫る鵰は目前まで来たところで急上昇しながら、ふんを落とせば。悪い鳳凰の天下の鶏冠にべちゃっと落ちた。

「はっははははは! ざまあみろってんだ!」

 穆蘭は鵰の背越しに、舌を出しあかんべえをする。

「なんとまあ」

 人々を落ち着かせながら空の戦況を見ていた貴志と瞬志らは、苦笑する。瞬志にいたっては、なんと士道にもとることをと思ったりもしたが。

 怪異の全ての根源はあの悪い鳳凰の天下からと思うと、これでもまだ足りぬくらいだとも思った。

 悪い鳳凰の天下は、鶏冠に付着する鵰の糞の不快感をひしひしと感じながら、傷ついた嘴で鋭く咆哮した。

 その咆哮の轟きは怨念の叫びであり、耳朶に触れれば鳳凰の天下の不快感がそのまま我が身に移ってきたような気分を禁じ得なかった。

 そしてやはり逃げようとする。それを穆蘭と鵰は追い。ついには空の彼方へと、視界から消えていってしまった。

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