我画願望
そんな空の戦いを見上げる瞬志と志明らは、二羽の鳳凰を交互に見やって。言葉もなく、様子を見守るしかなかった。
(しかし)
志明は考える。
(鳳凰はまこと気まぐれ)
かつて光善寺で見かけたときは、都の漢星の方に向かって飛んでいったと思ったのだが……。
何か、自分たちをいたぶろうとする意図でもあるんじゃないかと、悪い鳳凰の天下に対して勘ぐってしまう。
三人を乗せた鳳凰は、逃げようとする悪い鳳凰の天下を追い越し。素早く旋回し、対峙する。背に乗る三人も得物を構えて、臨戦態勢だ。
「!!」
穆蘭は、金羽龍が崩れ切らずに態勢を立て直したのを見て。入れ替わるようにして、鵰をその方へと飛ばし、天光北斗弾を放った。
しかし金羽龍はうまくかわし、大口を開けて咆哮し、穆蘭と鵰を威嚇する。その向こうで、七つの光弾は破裂し。空しく噴煙を上げた。
「なんて禍々しい」
穆蘭は本体より強そうな金羽龍の禍々しさに眉をひそめた。
悪い鳳凰の天下は逃げようとするが、それを追い、追い越し、旋回して、三人を乗せた鳳凰は対峙する。
「悪い奴を食うだけ、ってんなら知らん顔してやってもいいんだけど。こんなへんてこなのを生むんじゃね」
龍玉は背越しに悪い鳳凰の天下を睨み、さらに金羽龍を睨む。
虎碧も聖智も臨戦態勢。
貴志は返してもらった筆の天下を握って、地上から見守る。心の中で勝利を強く願望していた。
ここで敗れれば、どうなるか。
(暁星一国の亡びでは済まないだろうな……)
貴志は国というものに対して淡泊な感情があった。歴史を学び、紐解き、亡ばぬ国などないと悟った。しかし、人は残る。
一国の亡びを嘆かずとも、人の亡びは嘆く。それが貴志の考えだった。もちろん口に出せばまずいので、心の中に秘めている。
金の羽はまだ多くが宙を漂っている。三人は背から跳躍し、金の羽を飛び渡って悪い鳳凰の天下に迫った。
その鋭い嘴が大きく開かれ、耳をつんざく鳴き声が放たれる。
「!!」
聖智は軟鞭を振るって、金の羽を弾けば。勢いよく矢のように鳳凰の天下向かって飛んだ。
翼をはためかせ、生じた風で矢のように迫る金の羽を払う。その隙に、龍玉と虎碧は金の羽を伝い、頭上へと上がった。三人の乗った鳳凰は咄嗟に下方向へと向かった。
聖智はやや遅れて金の羽を伝って上へ上へと駆け上がり。龍玉と虎碧は鳳凰の天下を見下ろすところまで上がって、得物を握りしめて、思い切って飛び降りる。
落下する先は、豪奢な鶏冠が飾られた鳳凰の天下の頭部。
が、その顔は咄嗟に上を向き。大きく嘴が開かれる。




