餐後危機
貴志自身も、どうしてこれを描いたのか、自分でもわからないようであった。
鵰は最初は人の顔より少し大きい程度のものだったのが、空に舞い上がるやどんどん大きくなり。大人の男もその背に乗せられそうなほどとなった。
すると、ふっ、と何か気配がしたかと思えば。青い珠の七星剣がひったくられて。あッ! と思えば。咄嗟に見えるは少女の後ろ姿。
「穆蘭!」
なんと、青い七星剣となったはずの穆蘭が姿を現して。貴志は驚きの声が思わず漏れた。
「ここは任せてお兄さま!」
などと、意気込みを貴志に語る。一体何が穆蘭を実体化させたのか。
さらにその青い珠の七星剣を貴志からひったくってしまい。咄嗟に跳躍すれば、鵰もそれに合わせるように急降下し。穆蘭はその首に左手を回して、乗ったではないか。
鵰は甲高くいななき、穆蘭を背に乗せて上昇してゆく。その身に糊でもついているかのように、振り落とされることもない。
穆蘭を乗せた鵰は、上空の鋼鉄の阿修羅目掛けて風を切る。
聖智は軟鞭を手にしたまま、唖然としている。またも人智を超えたことを目にして。
「貴志のおぼっちゃんさ、あたしにも同じの書いて!」
龍玉はそうねだる。
貴志も頷き筆の天下を動かすが。なぜか今度はなにもない。
「えー、えこひいき!」
などと龍玉はすねたことを言うが、貴志もどうしようもないので困ったように筆先を見つめる。筆の天下はこんなところには、困ったものだったが、どうしようもない。
そうする間にも、穆蘭を乗せた鵰は鋼鉄の阿修羅に迫った。向こうもそれに気付いて、反転して、六つの鋼鉄の拳を振りかざす。
穆蘭は七つの青いの珠輝く七星剣を右手で掲げて、左手は鵰の首に回している。
「破邪の光よ!」
念を込めて剣の柄を握りしめれば、七つの珠はさらに光り輝き。そこから閃光が迸るではないか。
「天光北斗弾!」
なんと、七星剣から七つの火球が、青い火球が迸り出て。鋼鉄の阿修羅に迫るではないか。火球は粒程度のものだったのが、段々と大きくなり。七つとも阿修羅の頭と同じくらいの大きさになっていた。
「ああーん、なんだそりゃあ!」
「わけわかんねー」
あの人狼と画皮の声がする。火球は勢い強く、避けることもままならず、轟音を立てて鋼鉄の阿修羅に当たった。
鋼鉄の阿修羅は六つの手と脚をばたばたさせて、空の上でもがくそぶりを見せる。効いてはいるようだ。
「まだまだ!」
穆蘭は七星剣を振りかざし、鵰から跳躍し青いの七つの火球を放ち。ばたつく阿修羅に轟音立ててぶつかる。




