表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
480/539

餐後危機

「……」

 ぽかんとしてしまった聖智だったが、徐々に心が落ち着いてゆくのを感じた。世界樹から、不思議なやすらぎを感じていた。

「不思議だ。私はここにいた気がする」

 もちろん初めてのことなのだが。なぜかそう思えるのであった。

「この大樹は、世界樹というの。それだけ覚えていてくれたらいいわ」

 香澄こうちょうが優しく、ささやくように語る。マリーとリオン、コヒョは笑顔で頷く。

 大樹、世界樹の周りにはたくさんの子どもたちがいる。服装こそ皆緑の服を着ていたが、髪の色や眼の色、肌の色も様々で。まるで人の虹の様相を呈していた。

 ふと、チゲを見れば。くうに溶けるようにして、消えてなくなってしまった。

「あー、まだ残ってんのによー!」

「ちょっとぉー、ひどいじゃないのよー!」

 源龍げんりゅう羅彩女らさいにょは世界樹に対して抗議する。それに対して、どっ、と子どもたちは大爆笑だ。

「お兄さんとお姉さん、食い意地張ってるねえ」

「あったりめーだ! そのために生きてんじゃねーか!」

「美味いもの食ってこその人生じゃない」

 子どもたちに笑われても、幸いに怒ることはなかったが、恥じることもなく、悪びれずにそう言い放った。

 それがまた可笑しくて、子どもたちはまた笑った。

 ぴかッ!

 と、何か光った。稲光かと思われたが、大樹のうろから、なんとあの青銅鏡が飛び出て。貴志は軽やかに跳躍してその細い手で受け止め、これまた華麗に着地した。

「そういえば、青銅鏡のこと忘れていたな」

 貴志は苦笑する。懐をまさぐれば、筆の天下は確かにある。

 光ったのは青銅鏡のようだった。陽の光でも反射したのかどうか。いや、この青銅鏡なら陽の光がなくても自ら光を発しそうである。

 ともあれ、貴志が手に持つ青銅鏡を一同覗きこんだが。よく磨かれた銅の鏡面は、一同の顔を映し出すばかり。何の変哲もない鏡のようだった。

 それから、得物。

 源龍の打龍鞭だりゅうべん、貴志は筆の天下に加えて穆蘭ぼくらんの青い珠の七星剣。

 虎碧は赤虎剣せっこけんを、龍玉は青龍剣せいりゅうけんを、それぞれ腰に佩き。少しだけ鞘から抜いて、光る刃を確認して、鞘に戻した。

「……」

 香澄の穏やかな瞳が、にわかに鋭くなった。子どもたちを睨んでいるようだ。

 他の面々も、香澄の様子に気付く。リオンとコヒョ、マリーも、はっとする。

「よいしょっと!」

 コヒョは飛行能力があって、精いっぱい跳躍をしてそのまま世界樹を見下ろすところまで飛び上がって、宙に浮かんだ。

「なんだ、どうした?」

 源龍が打龍鞭を肩に担いだ格好でコヒョを見上げる。

「貴志、世界樹の鏡で子どもたちを照らして!」

 言うや、貴志は手に持つ青銅鏡、世界樹の鏡の陽光に反射させ。子どもたちを照らす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ