鋼鉄激突
……
「源龍! しっかりせい」
叱咤の声が聞こえる。同時に。
「役に立たねえ餓鬼だな! そのままおっちね!」
という罵倒もした。
源龍は、なぜか十四の少年に戻って。戦場で傷つき、意識を失ってしまっていた。戦闘はまだ続いている。
意識を失いぶっ倒れているせいで、敵兵は死んだと思ったのか源龍を相手にせず。生きた兵を相手に、刃をふるい血祭りにあげてゆく。
そう、負け戦だ。源龍の側は負けたのだ。死んだ者は放置され、生きた者は必死で逃げるも、結局は追いつかれ刃に掛けられて、殺された。
(戦は美談じゃねえなあ)
戦争に行かない連中は、なにかの軍記ものだかなんだかを読んで、戦争を美化して、憧れて、熱く語るが。
現実は悲惨そのものだ。
血と泥にまみれて汚れて。人の心も失い。ひたすら獣と化して。
(なんでオレこんなことしてんだろ)
叱咤をした兵も罵倒をした兵も、源龍を置いて逃げたが、結局は刃に掛かって、殺された。
英雄豪傑の活躍を熱く語る者には決してできない、というか、だからこそ、絶対に経験したくないことだ。戦で敗れて殺されるというものは。
彼らは空想上の戦争を楽しみ、さらに空想上の勝利に酔い痴れるだけの、性質の悪い酔っ払いだ。
その酔っ払いに命令をされて、戦場に行かされて、この様だ。
「立てる?」
優しげな声がする。「何だ」と、にわかに遠ざかっていた意識が少し戻り、半分ほど目を開ければ。
少女の姿が見えた。
「誰だ」
かすかながら声が出る。自分はまだ意識も朦朧としているが、少女を認識できた。しかしながら、この少女は何者なのであろう。
その少女は言う。
「私に負けたまま、死ぬの?」
その言葉が、棘のように死にかけた心に刺さる。
「なめんじゃねえ、勝負はこれからだぜ!」
……
「なめんじゃねえ、勝負はこれからだぜ!」
突然そんな声が響いたかと思うと、源龍の黒い星龍が海面から飛び出した。派手に飛沫を上げ、跳ね上げられた飛沫は陽に照らされて、虹を描き出す。
「うおお!」
亀甲船の面々は思わずあらぬ声を上げた。やられたと思った源龍がまだ大丈夫そうで、驚きと安堵の入り混じった声だった。
香澄は微笑んでいた。
黒い星龍に続いて羅彩女の赤い星龍も飛び出し、黒い星龍と並んだ。
「なんだ、くそ、しとめられていなかったのか!」
「しぶてえ野郎だなあ、もう!」
鋼鉄の阿修羅は蓮華をぶんぶん振り回し、星龍目掛けて突っ込みながら火焔を放ち、星龍も流星を放っての応酬を繰り広げる。
「しかし」
雄王は言う。
「戦いというものは、軍記物語のような、楽しいものではないな」




