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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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鋼鉄激突

 阿修羅は上手いことに、上二本の腕で首の付け根を羽交い絞めにし、星龍の顎が胸板に密着するようにして、頭が自由に動かせないようにしている。口も開けず、流星も放てない。

「ああ、もう」

「なんともはや……」

「……」

 貴志は首を横に振り、瞬志は呆れかえり、香澄も首を横に振る。他の面々もそれぞれの思いを抱いて、通心紙や青銅鏡に見入っていた。

 羅彩女の赤い星龍は、源龍の黒い星龍を捕まえた鋼鉄の阿修羅の周辺をぐるぐるまわり、様子見するしかない状態だった。

「オレにかまうな、流星をぶちかませ!」

「そんなこと言ったって」

「ぎゃっはははははは! かっこつけやがって!」

「そんなに死にてーなら、お望み通りしてやらあ!」

 鋼鉄の阿修羅は六本の腕にさらに力を込め、黒い星龍を潰そうとする。

「……」

 亀甲船の面々は無言で固唾を飲んで様子を見る。

「ええい、ままよ!」

 赤い星龍は思い切って阿修羅目掛けて突っ込む。

(あ、そうか!)

「おおう、来るか、来るなら来やがれ!」

 阿修羅は避けようともせず、黒い星龍を羽交い絞めにしたまま、赤い星龍を受け止めようとする。相当な自信だ。

 猛突進する赤い星龍は途中で突然、蛇のようなとぐろを巻き身を丸めた。その丸い様は赤い鉄丸てつがんさながらであった。

「むっ!」

「ひゃあー!」

 阿修羅からあらぬ声が響く。とぐろを巻き赤い鉄丸となった赤い星龍は、鋼鉄の阿修羅の顔面にぶつかった。細い龍の身でなく、丸くひとつの鉄の塊となった状態で体当たりしたのだ。

 いくらかの効果はあったと見えて、阿修羅はよろけ、力が抜けて、咄嗟に黒い星龍は六本の腕からするりと抜け出した。

「ありがとよ!」

 意地っ張りな源龍だが、この時ばかりは素直に礼を言った。

 青銅鏡や通心紙を通して観戦する面々もひとまず安堵し、思わず「ふう」と息を漏らす者まであった。

 鋼鉄の阿修羅はよろけながらも勢いよく間合いを開けるために飛びながら、体勢を立て直す。

「てめえこの馬鹿、だから避けろと言っただろー!」

「うるせー、当たってもこの程度で済んだじゃねーか!」

 声が拡がり、皆に聞こえる。どのようなからくりなのか。しかし仲間割れをするとは、らしいと言えばらしいが。

「このまま喧嘩してろ馬鹿!」

 源龍は己の黒い星龍を突っ込ませざまに、大口を開け流星を放った。それに続くように羅彩女の赤い星龍が飛ぶ。さっきと同じように鉄丸として身を丸めて。

「ぬうううおおおおおーーー!」

「うぎゃあああああーーー!」

 まず流星が当たり、継いで羅彩女の赤い星龍の鉄丸突撃が当たった。

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