鋼鉄激突
「……」
遠くなったとはいえ、雄王も太定も瞬志もそれを見て、呆気に取られて。
(大丈夫だろうか?)
と、にわかに心配になった。
「もう」
「どうぞ」
貴志はリオンから通心紙を借り受け、
「向かい合わせじゃなくて、対角線上に挟むんだ。それなら避けられても流星は来ないよ!」
と声を大にして言えば。
「お、そうだな!」
「言われてみりゃね!」
貴志に言われて初めて気付いたとばかりの反応が返ってくる。
軍師がいてやらないといけないのか。と思うと、貴志は心許ない気持ちになったが。風と潮流は亀甲船を運ぶ。
コヒョとマリー、香澄は懐から通心紙を取り出し。
「他にもあるから、これを通じて様子を見られるわ」
「もちろん、声援や助言を与えることもできますよ」
香澄の通心紙には、どんなからくりなのか、遠ざかる鋼鉄の星龍と阿修羅が映し出されていて。コヒョの通心紙には源龍、マリーの通心紙には羅彩女、リオンの通心紙は、絵が上から戦いの風景、羅彩女、源龍と三等分されている。
「そうそう、鏡も」
あの青銅鏡も差し出せば、通心紙と同様に戦いの風景が映し出されいる。
リオンは自分の三等分されている通心紙を貴志に渡す。
「このようなものがあるのか」
雄王らはただただ驚かされた。不思議な者たちとは思っていたが。ともすれば妖魔の類とも思える。しかし、害意はないのは今までの事で明らかだ。
どうなるかわからないながら、結局はこの者らに託すしかないのだと腹を決めざるを得ない。
それにしても、あの鋼鉄の星龍の中に小部屋があって、人がいるなど。誰が想像しえようか。
膝の高さの座椅子に帯で身体を固定し、胸元に浮いている水晶玉を握り。珍妙な格好である。しかしふたりはそのようにして鋼鉄の星龍を動かしているようだ。
鋼鉄の星龍は流星を放ち、尾をぶうんと振るって阿修羅にぶつけようとしたり、あるいは前足後ろ足の爪でひっかこうとしたり。ふたりは巧みに星龍を動かし、阿修羅に迫るが。
阿修羅も、人狼と画皮もさるもの。星龍の攻めを素早く交わし。火焔を噴き、六本の腕を振るい、あるいは蹴りを繰り出し。
三体は激しい空中戦を繰り広げた。
皆、四つの通心紙と青銅鏡を通じて戦いの様子を、固唾を飲んで見守っていた。
二体の星龍は貴志の助言通り対角線上に阿修羅を挟み、流星を放ち。体当たりも食らわそうとするが。動きを見破られて、素早く交わされてしまう。
「やみくもに攻めても駄目だよ。そうだな、源龍がおとりになって……」




