突撃流星
ふと、下を見下ろせば。そこにも無限に広がる宇宙、ではない。街が見える。かなりの大都市のようだ。こんな夜闇の中でも、無数の篝火が焚かれて、それもまた地上の星として空の星々ときらめきを競っているかのようであった。
「……これは、何か、戦の構えのようだな」
貴志はその篝火の焚かれっぷりを見て、そう呟く。他の面々も、下方に地上の都市が現れたのに気付いた。
「いつの間に?」
世界樹の仕業であろうか。宇宙の真っ只中にいたはずが、いつの間にか人の世界の空にまで降りたようだ。
「っていうか、漢星?」
見覚えのある建物がいくつも見える。特に李家の邸宅や、王宮……。上方から見下ろしたことはないが、地図や俯瞰図を見たことはあり、それと一致するのであった。
その間にも星は流星となって鋼鉄の火龍にぶつけられて。金属音の悲鳴が響き渡った。
地上では、貴志の言う通りそこは漢星で、空の騒ぎに驚いて多くの人々が夜空の下、外に出て。警備の兵も、すわやと、咄嗟に篝火を多く焚いて、いざという時に備えた。
この騒ぎである、王宮にも影響はないはずがなく。雄王や安陽女王に李太定にその息子の志明、辰から逃れた劉開華と公孫真も驚いて空を見上げた。
皆、中庭に集まって、松明を掲げる衛兵に護られつつ夜空を見上げていた。
「火龍!」
劉開華と公孫真は顔を引きつらせて驚いたが、もっと驚いたのは、流星が束になって鋼鉄の火龍を襲っていることだ。
「これは」
雄王も夜空を見上げて、呆然とするしかない。鋼鉄の火龍の話は、劉開華が錯乱したのではないかと思ったが、まことであったとは。それがここまで来たか、と思ったが。
流星に当てられのたうちまわる様には、不審や違和感もあった。
「貴志!?」
志明が目を凝らして、鋼鉄の火龍のみならず、その周辺も見渡せば。人が浮いている? 複数人が浮いているようで、見覚えのある者たちばかりな気がするのは、気のせいだと思いたかった。
それらが、気のせいか、高度を下げているのか徐々に大きく見えるようになってくるが。
気のせいではなかった。実際に鋼鉄の火龍をはじめ、その周辺には確かに人がいて、徐々に高度を下げてきている。
流星はあるところから出てきているようだ。誰かが何かを持ち、そこから迸り出ている。
太定は年のせいで目が利かず、夜空のただならなさは見えているが、はっきりと見えない。志明に見えるものを説明させる。
「はっ。鋼鉄の火龍のみならず、貴志やその連れ合いたちも見えます!」




