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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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突撃流星

 南達聖智ナダル・ソンチは軟鞭を虎碧こへきの足から解いて身構えるが、得物から火焔を放つことは出来ない。しかしさきほどのような援護は出来るので、援護に徹しようと割り切った。

 金髪碧眼の女性こと、マリーは娘を目にした途端のその危機に、恐ろしさのあまり脱力し宙に浮いた状態で卒倒する。それを咄嗟に支えるのは、見覚えのある白面の貴公子、李貴志イ・フィチであった。

「大丈夫ですか」

「ああ、いつも面倒をおかけしてすいません」

 マリーは赤面しながら我が身を貴志に預ける。娘の目の前で男性に支えられることに恥じらいを禁じ得ないが、仕方ない。

(っていうか、なんで僕らこんなところに)

 寝付けず寝台の上で瞑想をしていた貴志だが、気が付けば銀河や北斗七星きらめく宇宙の真っただ中。

 自分は平服だが、マリーにリオンは寝間着姿で、見ているこちらが恥ずかしくなる思いだった。それは当人も重々承知していたが、着替えもなく寝間着でも裸でないだけましと割り切るしかなかった。

「なんなのあれ!」

 と叫ぶのは羅彩女らさいにょだった。源龍げんりゅうのそばにいて、一緒に得物を構えて、鋼鉄の火龍を見据えている。

 貴志は劉開華りゅうかいかが言っていたのを思い出した。

(こんなのが現れたら、そりゃひとたまりもないだろうなあ)

 その脇を、流星のように鋼鉄の火龍向かって飛んでゆくのは、香澄こうちょうであった。

 抜き放った七星剣を握りしめ、まっしぐらに鋼鉄の火龍に向かってゆく。

 それは向こうも気付いて、火焔を放つ。

 紅蓮の炎が宇宙のまっただなかでほとばしり、香澄を焼かんとするが。七つの紫の珠きらめく七星剣閃けば、大風吹いて火焔は跳ね返される。

「この龍はこけおどしか!」

 とは、源龍と貴志、羅彩女は言わない。香澄と七星剣である。

 だがそこまで考えず素直に喜ぶ龍玉は、

「何だか知らないけど、みんなでやっちまえッ!」

 と青龍剣から青い火焔を放つ。虎碧も母に貴志が付いてくれていることを見て、得物の赤虎剣から赤い火焔を放つ。

 聖智は茫然としている。

「……」

 かつて命を賭して戦った相手が突然現れたのだ。しかし、言葉もないながらも、なぜか心は穏やかであった。向こうも聖智に気付く。

「あの女!」

 羅彩女は聖智に警戒する、改心したことなどもちろん知る由もない。が、コヒョは聖智のそばまで来ると、もろ手を広げかばう仕草を見せた。

「あ、大丈夫だよ、この人はいい人になっているよ!」

 コヒョも他人事ではない。彼自身も己心の魔に負け刑天になってしまっていた。源龍らはコヒョのことを知らない。また子どもか、とは思ったが。

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