表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
409/539

幻界入侵

 足には確かな岩盤の地面の感触。自分たちは確かに地を踏んで、そこはかと安堵する。

「ヌグニャ(누구냐 = 誰だ)!」

 突然の鋭い声。

「女!?」

 龍玉は素っ頓狂な声をあげつつ、九つの尾を咄嗟に隠しながら青龍剣を構える。虎碧も同じく赤虎剣を構え。

 コヒョはふたりの後ろに隠れた。

 うっすらと、人影が見える。龍玉と虎碧は人影と対峙する。

 しかし、姿はよく見えないながら、人影はひとりだけのようだ。それも、声の感じからして女のようだ。

 なるほど人影の形は細い。しなやかそうに見える。雲が三日月を隠しているが、風に流されてどこかへとゆき、月光がほのかながら地上を照らし。ようやく相手の顔貌かおかたちが見えた。

 細面で髪が長い。その目は鋭くこちらを見据えている。警戒はしているが、恐怖はなさそうで。気迫すら感じ。

 さながら鬼女のようである。

 と思えば、ひゅっ、と風を切る音がする。服の腰帯を解いたと思えば、それは十本ほどの短い棒を鎖でつないだ、軟鞭という武器であることがわかった。

 それが振りかざされて、まるで蛇のようにうねり、いつでもこちらに飛びかかってきそうだった。

 ひとうねりするたびに、ひゅっ、ひゅっ、と風を切る音も唸り。やがてゆっくりと着地した。が、その手の動き次第ですぐにこちらに飛びかかってきそうだった。

 コヒョは「ひゃあ」と声を上げ、ふたりの後ろでかがみこんでしまった。

 服装といえば、白羅の、というより暁星っぽいが。腰から下の着物の膨らみ具合は、チマっぽい。

 なにより、言葉。発音からして半島のようだが。

「あ、アンニョンハセヨ(안녕하세요 = こんばんは)……」

 虎碧はまさかと思いつつ、半島の言葉で挨拶をしてみた。すると、不思議なことに何かが入り込む感触がし。

「ふざけるな!」

 あきらかに半島らしい言葉を発音しながらも、その意味が理解できる。そういえば、世界樹の思し召しのおかげか、言葉に不自由することはなかったではないか。

 龍玉も、半島の言葉はあまりわからないながら、不自由なく会話できる。

 白羅で、光善女王クァンソンヨワンを捜索する際、会話は物覚えのよい虎碧に頼りっぱなしであったのを思い出し。心の中で密かに改めて自らを恥じて、虎碧に感謝をする。

 そう、虎碧はよく半島の言葉を学んでいるので、世界樹のお節介がなくてもいくらか会話ができた。それでも、やはりお節介してくれたらありがたいものだった。

 ともあれ、やはりここは天頭山の頂上の天湖なのか。相手は何者なのか。

「あんたこそ誰だよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ