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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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幻在相交

「これは一体どういうことだ。何が起こったのか」

 さすがの自由を愛する侠客でも、うろたえるのは免れなかった。それは刹嬉側も同じで、臨戦態勢をとりつつも、突然のことに言葉も出ず。心の中で、

(これは何事か)

 と、答えのない問いを繰り返さざるを得なかった。

 そんな中、マリーはへたりこんで、倒れこんでしまった。

「お母さん!」

 虎碧は驚いて咄嗟に駆け寄り、抱き上げようとするが。

「待て、無理に起こしてはいかん!」

 元煥に言われて、無理に起こさず横にさせたまま。しかし土の地面である、虎碧は母の頭を自分の膝に乗せてやって、手を取った。リオンと貴志もいつの間にかそばにいて、かがみこんで様子をうかがう。

「大丈夫かい?」

「お疲れのようですね」

「……ごめんなさい。こんな時に」

「お兄さま!」

 突然、穆蘭は何かが破裂したように、七星剣を振りかざして襲い掛かった。

「ええい、ままよ!」

 刹嬉も、肚を決めてか兵を従えて襲い掛かって来た。

「面白え、やったろうじゃん!」

 源龍も打龍鞭を振るって、駆け出し。香澄も鋭い眼差しで、

「是非もない」

 と駆け出し。羅彩女も源龍に並んで駆け出す。

 一気に戦闘が始まった。最初に弾かれるように襲い掛かった穆蘭には、香澄が当たり。刹嬉には羅彩女が当たり。源龍は兵を打龍鞭で薙ぎ払う。

 馬豪と宋巌は、動かずに成り行きを見守るしかなかった。もう事態の急変に飲まれて、動くこともままならぬ。

「ああ、神聖なお寺で」

「やむをえん」

 志明も事態の急変に驚き身動きもままならなず。神聖な寺の敷地内で突然戦闘がはじまって、恐慌をきたすが。元煥はまだ冷静さを保ち、源龍らに託すしかないと観念していた。

 刹嬉や穆蘭からは、とてつもない邪悪なものを感じるのだ。これは何か魔の所業ではないかと思わせるほどに。

 突然の戦闘だが、龍玉と貴志はマリーをかばう虎碧らリオンのそばに着いていた。以心伝心、というものを貴志は高く評価していないが、今はそれをはっきりと意識できていた。

「ぎゃあ!」

 兵はけたたましい悲鳴を上げて、打龍鞭に吹っ飛ばされて。倒れこんで、水が熱した鉄板で熱せられて蒸発するように、煙となって消えてゆく。

 その中には、省欣しょうきん魯真ろしんもいた。あっけないもので、十名以上いた兵は、ことごとく源龍に吹っ飛ばされて、水のように蒸発して消えた。

「なんだこりゃ?」

 また世界樹が何かしたのかと源龍なりに察したものの。驚きは禁じ得ない。

「これらは、僕の考えていた小説の登場人物なんだ!」

 貴志は顔を真っ赤にして言った。言わねばならぬこととはいえ、信じ難いことであるので、言うのは勇気がいった。

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