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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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打敗女王

 マリーとリオンは椅子に腰かけ、無言で成り行きに身を任せるしかない。香澄は扉のそばに立って、耳を澄ませながら身構えていた。

 七星剣の、紫の七つの珠の埋め込まれた剣身を見て、マリーとリオンは心強いものを感じて。安心して我が身を託せられるのであった。

 少し駆ければあちらこちらで乱闘状態となっていた。ぼろをまとった貧者が軽やかな体捌きで警備の兵を打ちのめしてもいた。没有幇の者だ。

 そんな没有幇の貧者とともに戦う兵も多かった。魯真が密かに勧誘した兵であろう。彼らも必死で戦っていた。

「安いろくでこき使いやがって!」

「オレたちは使い捨ての消耗品じゃないぞ!」

 などといった叫びもこだましていた。鋳王と刹嬉は悪政を布いた。ということは、宮仕えの者に与える禄も安いのは想像に難くなかった。

 しかし逆らえばひどい目に遭わされる。そのため仕方なく務めを、不真面目に果たし。仕返しの機会をうかがっていた。というのも、想像に難くなかった。

「安心して食事をしたければ、近しい者を食わせよ……」

 ぽそっと、李家の家訓をつぶやいてしまった。

 反乱の兵らはほとんど抵抗もなく、ずんずん王宮の奥へと進み。ついには王の間へと至った。さすがに王の間の前は近衛兵が守りを固めて、揉み合いになって前に進めなかった。

「おのれ恩知らずの謀反人ども!」

「ここから先は命に代えても通さぬ!」

 近衛兵にはそれなりの禄を与えていたようで、彼らは勤めに忠実であった。そんな近衛兵に向かい、

「うるせえ狗官ども!」

「今まで散々噛まれた恨みを晴らしてやる!」

「くたばれ走狗!」

 と、次から次へと近衛兵を罵る言葉がぶつけられる。それはどんどん増してゆく。数は圧倒的に反乱兵が多い。それだけ鋳王と刹嬉は恨みを買っていたということだった。

「外でも謀反が起きた!」

 そんな叫びが聞こえた。

 王宮は突然の謀反、反乱で混乱し、それが外に飛び火した。まだ捕まっていない没有幇の者らや、それに呼応する者らが勇を鼓して立ち上がったのである。

 やがて近衛兵は一人また一人と倒されてゆき。ついには人の堤も決壊して、踏み越えられてしまう。

 魯真は兵を率い、その少し後ろで孫威は兵に守られながら王の間へ突き進む。しかし貴志はなぜか足が止まって。部屋へ引き返す。

「あら、どうしたんですか?」

 マリーは戻った貴志をきょとんとして見つめる。リオンと、七星剣を抜いたままの香澄は顔を見合わせ、にこりと笑う。

「気が進まないのかい?」

 と問う。何に気が進まないのか。

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