表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
349/539

打敗女王

 しかもよそ者が屋敷にいたという。その話をしてから、小役人ははっとする。

 今更気付く。少女の存在に。

「穆蘭?」

 小役人は腰を抜かしてへたりこんだ。

 ただでさえ都は騒然として緊張感が張り詰めているというのに、そこに穆蘭の姿があるなど、どうして想像しえよう。

「穆蘭、お前、お前が連れて来たよそ者に庄屋たちを殺させたのか」

「きえええ!」

 省欣は突然、怪鳥のような鋭い声を発し、腰に佩く剣を素早く抜き放って、穆蘭目掛けて白刃を振るった。

 穆蘭は素早く避けて、間合いを取るが。その目は憎悪の炎に燃える。

 他の兵も省欣に倣って得物を構えて、刃先を穆蘭に向けた。

「うぬ、我らを嵌めようとしたな!」

「知らない、私は何も知らない!」

「黙れ、今まで散々我らに抗ったお前が、調子がいいとは思っていたが。畏れ多くもお国を罠に嵌めようとしていたな!」

「ああ、もう、やっていられない!」

 何も話す気になれず、穆蘭は脱兎のごとく逃げ出した。

 もちろん見送るわけもない省欣は自ら駆けて穆蘭を追ったが。その逃げ足速く、みるみるうちに間は開いて。ついには夜闇の中に飲まれるように姿が見えなくなった。

「くそ!」

 捕まえられない悔し紛れに剣をひと振りし。はっとして、

「王宮へ戻るぞ!」 

 と、手近な者たちだけで急ぎ王宮に戻った。罠であるなら、王宮に曲者が忍び込んで、何か事を起こすかもしれないと。

 さて、貴志たちである。

 宋のぼろ食堂から逃げ出し、大通りに出て、怪訝な目で見られながら貴志はマリーを、香澄はリオンを担いで駆けて。

 もちろん警備の兵に目をつけられて、

「そこのお前たち!」

 と、追われた。

 やむなくまた別の路地裏に逃げ込み。驚く貧者たちをよそに、警備の兵を撒いて。扉がぶらぶら空いている空き家があったので、そこに逃げ込み。息を潜めた。

 が、兵もさるもの。

「いたぞ!」

 ぬっと窓から顔を覗かせて、貴志らを見つけ。十名ほど集まって。いよいよ追い込んだ。

 貴志と香澄が兵らと対峙し、マリーとリオンはその後ろに隠れた。やむなくも、強行突破せねばならないかと悩んだが。

(あ、そうだ!)

 何かがぴんと閃いて。

「申し訳ありませぬ。私らは孫威様の知り合いで、都に招かれて来たのですが。あまりの賑やかさにちんぷんかんぷんになって慌てた次第。決して怪しい者ではございません」

 などと言う。

「なに、孫威殿の知り合いとな」

「はい。孫威様には昔お世話になりました」

 もちろん嘘である。しかし追い込まれて、いちかばちかの賭けに出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ