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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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走向継続

 川のせせらぎが耳をやさしくなで、空に遊ぶ鳥の鳴き声も添えられる。幸い天候は晴れで、朝日が陽光を降り注がせる。

 風も涼しい。

「……」

 ふと、あることに気付いた。

「参拝の者がおらぬようだが」

 いつもは信心深い巡礼者なり参拝者なりが常に寺を行き来しているはずなのだが、なぜかその姿を見ぬ。

 前もそうであった。

 この者らが光善寺に来ると、結界でも張られたかのように余人がいなくなる。

 そう考えると、志明の背筋に冷たいものが走った。

 人知を超える何かが……。

 いやいやと、首を横に振った。さすがに考えすぎだ。たまたまだろうと言い聞かせた。

「おい」

 声にハッとすれば、腕を組んだ源龍が偉そうにふんぞり返っている。

「何ぼーっとしてんだよ、行くぞ」

「もちろんだとも」

 源龍の偉そうな態度にむっとしながらも、志明は気を引き締めなおして。部下に一同を囲ませて、山を下りる。

 道中やはりひとっこひとりともすれ違わない。やはりこれはおかしいことだが。余計なことは考えないことにする。

 それなりに高い山なので、下りるのには時間がかかり、下り坂とは言えふもとに下り立ったのは昼時であった。

 その間、誰も何も言葉を発しない。静かなものだったが、その静かさが少しばかり不気味に感じないでもなかった。

 ふもととなれば、民家もあり人の往来もあり。一同が下りると同時に寺への巡礼者や参拝者が、登山道を上るようになった。

 やはり不思議なことである。やはり人知を超えた何かが……。そう思わざるを得なかったが。それの正体を知るのも、なんだか怖かったので敢えて深追いはしない。

 ふもとの街まで下りて、近くに見える大きな建物に行く。そこはここら辺をまとめ上げる地主の屋敷だという。

 中に入り、大広間に通されれば。長卓に食事が置き並べられて。ほう、と源龍は少し声を出す。

「これは特別だからな」

 恩着せがましく言う志明。国に恩のある者たちではあるが、同時に得体の知れぬ者たちである。機嫌を損ねて暴れ出したりされれば厄介だということで、食事が用意されていた。

 ほかほかの白米に肉の炒め物、そして漬物のキムチが添えられていた。それらを一同はありがたくいただいた。

 歩き疲れた身体に飯を与えれば、身も心もくつろぐものである。

 香澄は、

「カムサハムニダ」(감사합니다)

 と、暁星の言葉で合掌しそばに控える召使いと志明に礼を言った。虎碧とマリー、リオンもそれに倣って、召使いや志明に厚く礼を述べた。貴志もそれに続く。

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