走向継続
この寺の法主には、さすがの志明も頭が上がらず。
「これは、ご法主。ご挨拶が後回しになり、申し訳ありません」
「かまわぬよ」
家来の間をかき分け、志明と並び一同を笑顔で見据える。
「この者らがまた来るようなことがあれば、漢星に連れてゆくように、王様から命じられているのであろう」
「はい、その通りです。王様も女王様も、不審な気持ちを持たれつつ、ご興味をお持ちあそばされておられます」
場の雰囲気が変に滞っていたのが、元煥の出現で前に進むような感じになった。それをよそに、小僧も来て、食器を持ち去ってゆく。
「まあまあ、あれこれ話すこともない。王様と女王様のもとにお連れするがよかろう」
そう言う一方で、別の小僧が膳を持って庵にやってくる。朝食である。ただし庵の面々の分のみ。
「朝飯くらい食う時間はくれてやってもよかろうて」
「……。待ちましょう」
志明は元煥に一瞥され、強い態度に出ず、部下とともに庵を出た。
小僧は朝食を置いて、
「じゃあの」
それだけを言い、そっけなく小僧とともに庵を出る元煥。
それぞれの者は互いに顔を見合わせて、朝食をとることにした。
しかし寺なので精進料理。源龍は、食ったがその実感がないとぼやく。だから、山から下りたがった。
志明の監視付きなのだが。
「いざとなりゃ、ひと暴れして逃げ出してやる」
などと物騒なことを平気で言う。
「おい!」
源龍の言葉が聞こえたようで、外から志明が怒鳴る。しかし武においては源龍にかなわず。だから弟頼みであった。
(その貴志まで裏切るようなことがあれば。オレはとてもではないが、生きてはゆけぬ)
内心で懊悩する。
(兄さんも勤め大変だ)
源龍が暴れ出したら止めねばならぬとは思っている。やはりここでは兄側に着くべきであろう。源龍のためにも。
源龍は志明の怒鳴り声を無視し、飯を頬張る。が、精進料理なので、やはり食べ応えはなく。物足りなさは否めなかった。
他の面々は無駄口は叩かず、それぞれ食事を済ませて。
「ふう」
と、龍玉はくつろいでひと息つく。
香澄は好ましく微笑んだ。
(しかし)
外で長椅子に腰掛け食事が済むのを待つ志明は、ひとつ疑問が浮かぶ。
(この集まりは、誰がまとめているのか)
考えてみれば不思議な集まりである。集まる以上、まとめ役がいるはずだが。誰なのかは咄嗟にわからぬ。
一番年長そうなのは金髪碧眼の女性だが。そんな感じはしない。源龍や貴志でもない。まさか褐色の肌の子どもではあるまい。
しかしそれにしても、誰がこの集まりをまとめているのか。




