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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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永無止境

「そんなことはどうでもいい!」

 ついには、源龍は打龍鞭を振り上げて駆け出し。人狼に襲い掛かった。

 それに対し、骸骨と首無しが人狼に代わって相手をしようかという時。

 けたたましい猛禽類の、耳をつんざく鳴き声がして。

 一同動きを止めて、空を見上げてみれば。宮廷の上空に、鳳凰。

 源龍はすぐに戻り。船の面々も空を見上げて。人狼と画皮に骸骨、首無しも、ひと塊になって空を見上げた。

 人をついばんだ鳳凰、天下は新たな餌を求めて宮廷に狙いを定めたようだった。

「なまじっかな者より、こんな時に宮廷にいる連中の方が、美味そうな臭いがするんだろうね」

 龍玉はぽそりとつぶやいた。

「さあどうする? 天下が来れば我らはひとたまりもないぞ」

 などと言いながら、人狼は余裕を見せて。画皮も反魂玉を持って、へらへら笑っていた。

 はったりなのか、本当に余裕があるのか。

 そもそも宮廷にゆくことを言い出したのは香澄だったが、当の香澄は静かに鳳凰を見上げるのみ。

 だが、おもむろに、

「貴志」

 と呼びかける。

「なんだい?」

「筆を構えて」

「筆を?」

 貴志は武具を持ってはいないが、懐に筆の天下を忍ばせてあった。それを手に取って出す。

「今書くべきことを、書いて」

「なんだって?」

 貴志は迷う。香澄はこんな時に何を言い出すのだろう。

「あなたの思いのままに」

「僕の思いのままに、と言われても」

 などとやりとりをする間もない。骸骨と首無しが飛びかかって来た。源龍と香澄はその相手をする。

 人狼と画皮は高みの見物を決め込む。

 空には鳳凰。下界の宮廷をうかがっている。

 首無しは源龍が、骸骨は香澄が相手し。それぞれ渡り合った。貴志は今書くべきことは何かと、思案を巡らせていた。

 船は中庭に下りたまま。皇族は我が首を抱えた首無しの伴顕や、骸骨と成り果てた胤帝に度肝を抜かれる思いだった。

 あまりのことに皇后はついに失神し。皇太子はそれに寄り添い、公主はその胸に身を預け。羅彩女に龍玉、虎碧は四方八方に注意を向け、身構える。

「反魂玉の結界があるからな、鳳凰の天下を当てにしても無駄だぜ」

 画皮は下卑た笑いを見せる。それにしても、反魂玉とはどれだけの力があるのだろうか。

(って言うか、そんなもの出していないんだけどな!)

 貴志は自分の小説世界と歴史とが混ざり合い、さらに何らかの手が加えられたこの混沌とした世界がどうして出来て、自分たちは放り込まれたのかと、不思議な気持ちでいっぱいだった。

 本当に、世界樹は自分たちに何をさせたいのだろう。

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