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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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永無止境

 源龍は思わず叫び、香澄は咄嗟に駆け出し。羅彩女と龍玉も驚きを覚えながらも香澄に続いた。

 それは、豪奢な帝衣をまとった骸骨と、手に己の首を持つ異様な首無しの者であった。

「胤帝に、伴顕!?」

 骸骨はその帝衣から胤帝であると思われ、首無しの者は、その手に持たれる首の顔を見れば、それは伴顕の首だった。

 それらが人に襲い掛かり、骸骨はその拳と脚で人を吹き飛ばし、悶絶させ。首無しは手を伸ばして、首に人を噛ませていた。

 いずれもなぜか強くて、近くにいた守備兵が咄嗟に戦うもこれ皆ことごとく弾き返されて、もんどりうって討たれる有様。

 そこに、七星剣がきらめき、帝衣の骸骨に斬りかかり。羅彩女と龍玉は首無しに向かって得物を振るった。

「なんとおかわいそうなお姿に」

 香澄ははかなげにつぶやき、七星剣を振るう。しかし、武芸の心得はあるものの、並程度のはずの胤帝の骸骨は、軽やかな所作を見せて。七星剣をかわす。

 伴顕も同様、龍玉の剣や羅彩女の振るう軟鞭をこれも軽やかな所作を見せてかわす。

「これは……!」

 その様子は船からも見えた。落ち着くかと思われた期待は見事に外され、あろうことか新たな屍魔が現れたのである。貴志もリオンも思わず息を呑む。

 皇族たちはマリーに付き添われて、小屋の中。こんな時ながら、ゆっくりして溜まった疲労を癒してもらっているが。やはりこんな時ゆえに、緊張をおぼえて落ち着くにも落ち着けない。

 皇太子は外の様子が気になって、マリーが止めるのも聞かずにやや強引に外に出てみれば。

「いけません」

 貴志が止めるのも聞かず、船縁越しに下界を眺めれ見れば。

「……!」

 帝衣をまとった骸骨が香澄と渡り合うのを目にして、石のように固まり、次に腰を抜かしてへたり込んでしまった。

「父上は……」

「何者かが反魂術を以って、蘇らせたようです」

 衆目に晒されながら燃やされたとは聞いたが、まさかあんな様で屍魔として蘇らされるとは。子として大きな衝撃を禁じ得なかった。おまけに伴顕まで、である。

「私たちはどこまで罰と憎しみを受けねばならぬのか」

 皇太子の悲しいつぶやきに、貴志もリオンも言葉もなかった。

「っむ!」

 関焔はまた再び屍魔の首を大刀で刎ねた。伴顕の首に噛まれた者が、屍魔として蘇ったのである。これとは別に源龍も同じように蘇った屍魔の頭を打龍鞭で粉砕した。

 それから女たちに加勢にゆこうとしたとき。

「はっはっはっは!」

 けたたましい笑い声がしたかと思えば、宮廷から何者かが飛び出し源龍と関焔の前に立ちはだかった。

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