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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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鋼鉄姑娘

「僕の話?」

「ええ。貴志さんの書いた鋼鉄姑娘のことを、詳しくとか……」

「それはいいけど、急にどうして?」

「お母さんとリオン君の気が紛れたらと。貴志さんなら、どうにかしてくれるんじゃないかと」

「それは、買い被りだよ」

 謙遜しながら苦笑し、だけど確かにひどいものを見せられて悩んでいるマリーとリオンを見て、何とかしてあげたいと思ったが。

「でも、やるだけやってみようか」

 マリーとリオンも、気が紛れるならと。虎碧と貴志とで四人、円座になって。貴志は物語を語った。

 他の面々は外で見張りだ。

 話は鋼鉄姑娘ではなく、別に考えていた恋愛小説だという。これは舞台は母国の暁星で、宮中で出会った武官と女官の恋物語であった。

「ハヌルマンクム・タンマンクム・サランヘ。天地と同じくらい愛していますと、彼女は言った……」

「まあ、素敵」

 マリーと虎碧の母子はは笑顔で応えた。女性の方から愛を伝えるなんて、なんて大胆な、とも思った。

 しかしリオンは……。

「いい話だけど、僕には早すぎるかな」

 などと言い出す。

(ありゃ、選択間違いだったかな)

 言われてみれば、リオンのような子供に恋愛の話は早かったか。

「こんな恋をしてみたいです」

 なぜか虎碧が一番顔を赤らめて、胸までときめかせているようであった。そこはやはり、女の子なのだろう。

「素敵な人が見つかるといいね」

 貴志はやはり、いい反応を示されるのは嬉しく。笑顔でそう応えた。

 リオンはどう反応していいのかわからないようだった。

「ねえ、他に面白い場面はないの?」

 などと言う。

「そうだね。悪者が陰謀を巡らし、ふたりは刺客に襲われるんだけど、武官は剣を閃かし、刺客と渡り合うんだ」

 その情景を細かに語れば、リオンの顔に輝きが増す。恋愛描写より戦闘描写に心が動くあたり、そこはやはり男の子だった。

(女の子と男の子とでは反応が違うんだなあ)

 思わぬところで学びを得て、貴志は得心する思いだった。

(どの層に向けて書くか、少しは意識した方がいいかな?)

「こうして、ふたりはめでたく結ばれたのでした」

 ともあれ、物語を語り。マリーとリオンは気も紛れ、落ち着きを得たようだった。そこでも、貴志は学んだ気持ちだった。物語の力を。

「いい話でした。貴志さん、ありがとう」

「うん、意外と面白かった」

(意外とは余計だよ)

 貴志は好評を得て、得意な笑みが浮かぶのを禁じ得ない。

 話は外の面々にも聞こえて、これもまたいい暇つぶしになった、と言いたいが。源龍はあくびをして、やっぱり暇そうにしていた。

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