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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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回到未来

 源龍と羅彩女も、まじまじと元煥を見やってしまう。

 元煥は意味ありげに、不敵な笑みを浮かべた。他の僧侶はぽかんとして、何の話をしているのか、皆目見当もつかない。

 しかし、法主ほどのお方が話されることならば、平凡な我らにはまだまだ悟り得ぬ境涯のお話なのであろうと、不思議な納得もしていた。

「お前この寺に来たことがあるのか?」

「いや、ない。法主と側近の僧侶が漢星に来た時に、お会いしたことがあるんだ」

「なるほど……」

 法主と呼ばれるほどの者と顔見知りながら、貴志が寺に来たのでなく元煥が都に来た折に面会をしていた、とは。源龍は改めて貴志の李家の地位の高さを、変に実感した。 

 法主は王に乞われて都に赴き、諸々の説法を聞かせ、まつりごとの相談に乗ることもあるほどの人物であるという。

(お人好しだけど、お上が皆こんな感じだったら、あたしら庶民は苦労をせずにすんだろうねえ)

 などと、羅彩女は考えた。

 途中、石造りの石塔もあった。周辺は良質の花崗岩がよくとれ、建築物にもよく使用されていた。

 そうこうしているうちに、寺院の門をくぐり、庵に入った。

 庵は簡素な床敷きの木造の建物で、木の床の上に、一同円座となって座った。

 寺は高い山の上にあり。周囲は自然豊かな景色が広がる。緑広がる山野、山と山の間の谷には、山間を縫うように川が流れていた。

「多少の不便もあるが、高い山の上にあれば、俗世の争いに巻き込まれることも少なくてのう。おかげで修行に専念できるわい」

 光善寺に限らず、標高の高い山に寺院などの宗教施設がよく造られた。それはひとえに戦乱から逃れるためでもあった。山の上まで上るのは、それだけでも一苦労である。建造物を建立するのも多大な労力を要する。それでも後々の事を思えば、長い目で見れば、山の上に建てたほうがよいのである。

「まあ、悲しき人の世よ。争いの多い人の世から逃げようと思えば、山の上に籠らざるを得ぬ」

 争う者は肥沃な平地ばかり求め、わざわざ山頂に上る労は惜しむものだ。争う者にとって、山暮らしは外れくじである。ゆえに、元煥らのような者たちはそれを逆手に取った。というところか。

 他の僧侶は、外にいて。庵には四人。

「下山して使いも出した。のち貴志さまの兄上もやってこようて」

「はあ……」

 貴志は身がしまる思いだった。慶群は兄で三男の李志明イ・チミョンの派遣先でもあった。

「ふふ、しかし、面白い巡り合わせであるな。お三方をお見掛けし、前世の記憶がにわかに蘇ってきよった」

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