回報戦闘
不覚にも隙を生じ、腹に蹴りを食らった。しかし多少よろけはしたが、鞭の柄を離さず。引っ張り合いになった。源龍は打龍鞭を引こうとしたが、その時に阿修羅は手を離したから、勢い余って後ろ向きに倒れて。
羽毛から足を外し落下する。
「うお!」
「源龍!」
源龍は真っ逆さまに落下し、貴志らは思わず気を取られてしまって、隙を生じ、突かれて、阿修羅の攻めを食らって、声を漏らして続いて落下してゆく。
虎碧と龍玉はひらりを身を翻し、羽毛に上手く足を掛けて踏ん張って。貴志はうまく身を立て直せないながらも、羽毛に足を掛けつつ降りて。船に足を付けた。
源龍は、落下し、その先に大鮫が大口を開けていた。
鯱の鬼と追いかけっこをしていたが、空から獲物、もとい源龍が落ちてくるのを目ざとく見つけたのである。有事のさなかも餌を求めること、まさに畜生であった。
鯱の鬼といえば、残念ながら距離を開けられていた。だから大鮫は源龍にかまけられた。
「させるか!」
羅彩女は鯱を大鮫と渡り合わせていたが、どうも取り合ってもらえず避けられるばかり。果ては間合いを開けられてしまった。
「真面目に相手しろ!」
と怒ったが、畜生たる鮫が聞くわけもない。が、避けてばかりはこの時を狙っていたのかどうか。鯱も迫るが、間に合いそうもない。
阿修羅は構わず翼虎を追った。
源龍は身にまとう鎧の重さもあってか、上手く身を翻せず、このまま大鮫の大口の中に落ちるかと思われた。
しかし、咄嗟に羽毛を掴むと、画皮にしたように大鮫に放った。
羽毛は羽柄を先にして大鮫に迫り、その右目に突き刺さった。続いて左目にも羽柄が突き刺さった。
突然光を奪われて驚いた大鮫は滅茶苦茶に暴れ出しながら、海に潜ろうとして。その時に丁度源龍がすんでのところまで来たが。うまい具合に尾ひれが上になって、源龍は弾かれて、飛んで、これまたうまい具合に船に背中から落ちた。
「いちち……」
「源龍、大丈夫か!?」
「ぶっちゃけ大丈夫じゃねえ、鮫の野郎、もっとうまく打てってんだ」
急ぎ駆け付けた貴志に、源龍は起き上がりながら、相変わらずの減らず口を叩いた。
「この様子なら大丈夫そうだな」
「なんだと」
「喧嘩は後にしな、今それどころじゃないだろ!」
羅彩女はそう言いつつも、源龍が助かって嬉しそうで、心なしか顔はほころんでいた。
大鮫と言えば、両目をやられて目が見えなくなり、混乱して海に潜ったままだった。
「あ、鮫が!」
にわかに、海の様子が変わった。




