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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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回報戦闘

 さっきの虎碧の時のように鯱を跳躍させれば、続いて大鮫も迫り。龍玉をやり過ごして身を翻し、尾ひれで画皮どもを、ばしん、ばしん! と打てば。大鮫の大口目掛けて飛んでゆく。

「し、しまった!」

 画皮どもは己の不覚さを呪ったが、時すでに遅し。そろって大口の中に放り込まれて。無慈悲な牙が噛み砕く。

「ぎゃああああああああーーー!!!」

 大鮫は悲痛な悲鳴を大口から響かせて海に落ちた。今度は量が多かったので、大口からこぼれたのもあるが。それは他の小魚が群れ集まって、ぱくつくのだった。

「はッ! 所詮は画皮も畜生さ!」

 得意な顔をして龍玉は吠えながら、羽毛を足掛かりに跳躍する。跳躍しながら、襟を直して。その足のすぐ下まで大鮫が跳躍して迫ったが。

「ありがとうね!」

 と愛想よく片目をつむって笑みを向けて礼を言って。落ちゆく大鮫を見送った。やった、と思いつつも、羅彩女は龍玉のやり方にやや納得してないようだ。

「やり方がはしたないねえ」

「はは、ちょっと見せるだけさ。触らせはしないよ。って言うかあんたも人のこと言えないでしょ!」

「あたしは一途だからいいの!」

「ふん、言ってな」

 ともあれ、これにて画皮どもは皆片付けた。あとは阿修羅だ!

「やるもんだなあ」

「たいしたもんだぜ」

「龍お姉さんたら、はしたないけど、すごい……」

 得意な笑みを満面に浮かべる龍玉を三人は呆気に取られながらも感心した。

 阿修羅は画皮が全滅したのを見て、翼虎を追うのをやめた。

「む、人間のくせに知恵が回るではないか」

 まだ自我に目覚めていない翼虎は、阿修羅から逃げ惑うばかだったが。追われなくなっても、同じところをぐるぐると回るばかりだった。

(翼虎はどうなるんだろう)

 今まで聞いてきた伝説とは違うが、翼虎は確かに出た。それからどうなるのか、貴志は不安を禁じ得ない。

 それでも、まずは阿修羅である。画皮を片付け、三人掛かりで羽毛を足掛かりに跳躍し阿修羅に迫り。また阿修羅も三人に迫り、対峙する。

 海では羅彩女の出した鯱の鬼と大鮫が、白波を立てながら身体をぶつけ合っていた。

 羅彩女も気が付けば汗びっしょりである。鯱を操るため、一瞬たりとも気が抜けない、強い緊張感をもって戦っている。

 気を抜けば大鮫にやられる。もし鯱が仕留められれば、彼女に抗う術はなくなり。大鮫の巨体が船を破壊し、そして画皮どものように無慈悲な牙の餌食である。

 しかしいつしか、大鮫は鯱を馬鹿正直に相手にせずやり過ごし、船に迫る。

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