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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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回報戦闘

 振り上げざまに、また画皮をかわしざまに自ら落下し。

 ある程度距離を開けて、羽毛に足を掛けて得物を構えなおす。

「さすがだなあ。その硬鞭こうべんを絡め取ってやろうと思ったけどな」

 もし打龍鞭が脳天を打とうとも、打たれた部分をへこませてそのままミミズどもで絡め取るつもりだったようだが。それは源龍も見抜いた。

「オレらをぶっ殺すのは骨が折れるぜ~。このミミズどもを皆殺しにせにゃならねえからな」

 勝ち誇ったように画皮は言う。他方では貴志と龍玉、虎碧が画皮と競り合っている。その画皮も、いつの間にか三つに分裂して一対一だ。

 空では、ついに阿修羅は翼虎に追いついて、追いかけまわしている。

「くそ、なんとかならないのか!」

 貴志は槍の穂先の刃の部分を、龍玉と虎碧は剣を当てようとする。さすがにミミズも斬られればひとたまりもないが。画皮どももさるもの、馬鹿正直にぶつかりあわず、へらへらにやにやしながら、相手の攻め手をかわすばかり。

 それも、相手の頭上の位置を取ろうとする。

 阿修羅が翼虎を攻めることに専念できるようにすればよいことを心得ているあたり、ただの人外でもない。

(どうすれば……)

 得物を振るい画皮と渡り合いながら、虎碧は思案する。

「へへへ、おめえめんこいなあ、特に目が碧いのが」

「からかわないで!」

「からかってねえよ、ほんとだよ、だから殺し甲斐あるなー」

「おめおめとやられはしないわ!」

「虎碧を傷つけたらただじゃおかないよ!」

 龍玉の叫びが割って入る。

「オレぁ年増でもかまわねえぞ」

「誰が年増よ!」

 からかう画皮に、ぶうんと剣を唸らせるが、いやに滑らかな動きでかわされてしまう。

「おい、つぶすのは中身だけだぞ。こいつらの皮をいただくんだからな!」

「誰もあげないよ!」

 貴志も槍を振るい、穂先の刃を当てようとするが。この画皮ども、にくたらしいほどに上手くかわし、そのたびに、

「あかんべえ」

 と、舌を出す。 

(どうすれば……。……あ、そうだ!)

「羅彩女さん!」

 虎碧はわざと羽毛から足を外し、自ら落下し。それを画皮が追った。

「なんだい!?」

 呼ばれて顔を上げて、落下する画皮と虎碧を目にし。はっと、何か閃いて鯱を跳躍させた。続いて大鮫が大口開けて追ってくる。

「ほらミミズの餌だよ!」

 木剣を通じて意思を飛ばすかのように突き出せば、鯱は身を翻して尾ひれを上にし、虎碧をやり過ごして画皮を尾ひれで打つ。

 ばしん! という耳をつんざく音がして、画皮は吹っ飛ばされた。

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