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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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回報戦闘

 船は揺れる。波音は船室内にまで轟く。子どもたちは恐怖のために悲鳴を上げる。その子どもたちに向けて、

「大丈夫よ、強い人たちが助けてくれるわ」 

 と、優しげなささやき。子どもたちも、怖い思いをしながらも、うんと頷いて。おとなしくして。香澄はそれを笑顔で見つめていた。

 さて、外。

 源龍は金色の羽毛を足掛かりに跳躍し、宙を舞う阿修羅と渡り合っていた。羅彩女は鯱の鬼を大鮫と渡り合わせていた。

 龍玉と虎碧はもう一隻の人狼の船で人々を守っていたが、船縁になにか、べちゃ、という不快な音がしたかと思えば。

「おこんにちはー」

 などとのんきに、あの、画皮の中身ども五体がぬっと姿を現し船縁を越えたではないか。人狼はいなかったが。龍玉は咄嗟に睨み付け、虎碧は身構える。

「お前ら!」

「へへへ、なんか面白そうなことしてんなー。オレらも混ぜてくれよ」

「ほざけッ!」

 龍玉と虎碧は駆け出し、鋭い刺突を繰り出す。画皮どもはそれをかわしながら。

「お前らの皮をいただいて、男をたぶらかすのもいいかもしれねな」

 などと言う。自分たちの命はおろか皮までを奪われ、それを画皮が被って男をたぶらかすなど。考えただけでぞっとすることだった。

 貴志と言えば、源龍の援護に阿修羅と渡り合おうとしたが、手を出すな! と言われて。それで、大鮫と渡り合おうとしたが、鯱の鬼とともに海の中で激しくぶつかり合い、海では貴志も手出し出来なかった。

 そんな時に、画皮どもがもう一隻の船に現れて。龍玉と虎碧のふたりでは数的不利のようで、咄嗟に飛び移って、槍を振るった。

「おっと、これは白面の貴公子さまのおでましか。こいつの皮をかぶって女をたぶらかすのもいいかもしれねえな」

「うるさいよッ!」

「ぎゃあッ!」

 減らず口を叩いた画皮の胸を槍が貫く。時を同じくして、龍玉と虎碧もそれぞれ一体我が剣で仕留めた。

 仕留められた画皮はそのまま倒れこんだ。

 画皮はこれで五体から一気になり、三対二になると安堵したが。

「ち、畜生、こいつら強いよ」

「むう、かくなるうえは!」

 倒れこんだ画皮どもは、太いミミズが集まったようななりをしていたが、ほんとうにミミズだったとばかりに、一本一本の単体にばらけた。その見てくれの気味悪さに、人々は怖気を感じて、悲鳴もあがった。

「うえ、きもー」

 龍玉もあからさまに不快感を表す。

 しかしその一本一本のミミズのようなものは、他の二体にまとわりつき、さらにその二体も手を取り合って……。 

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