表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
213/539

回報戦闘

ナビ光善女王クァンソンヨワンの名か?)

 しかしゆっくり考えるゆとりなどなく、竜巻は強く、風は吹きすさび、その風の中でじたばた溺れるしかできぬ。

 それでも、目をどうにか開いてこの風から逃れる機会をうかがおうとするが。風にあおられて、仰向けの状態で風に浮かされる。そこでまた視界に飛び込むものがあった。

 何かがはるか上空から落ちてくる。それは小さな点だったが、やがてはっきりと姿かたちが見えるようになり。それは人間のようだった。女性用の僧衣をまとった尼僧のようだった。貴志ははっきりとそれを見た。

「蝶、尼僧。光善女王だ!」

 思わず李貴志イ・フィチは叫んで、それは源龍げんりゅうにも聞こえた。

「じゃあ翼虎イグホが出るってのか!」

 などと言っている間に、尼僧は落下してゆく。風の影響を受けることはなく、落ちてゆく。

 その落下する先には、蓮華があった。

 蓮華は開かれていた。

 光善女王と思しき尼僧は、その蓮華の中に吸い込まれるようにして落ち込んだ。阿修羅も人狼も、それが見えていたが風にあおられ溺れるばかり。

 蓮華は光善女王を吸い込んだかと思えば、一瞬ほのかに白く光り白蓮のようだった。それから、その光は集約されて。それはまるで塔にでもなったかのように、一直線に上空を指し示すように直立した。直立して、その幅は広がって。

「……」

 何が起こるのか。四者はただそれを眺めるしかできない。


 龍玉りゅうぎょく虎碧こへき香澄こうちょう、世界樹の子どもも、物言わず静かに見守るが。龍玉は最後の三つ目を頬張って、急いで咀嚼し。徳利を口につけ、喉の奥へと流し込む。

 周囲は相変わらず白一色の雲の中の世界。この白い雲の覆いの向こうに、本来の自分の住んでいた世界があるなんてにわかには信じられないような感じだった。

「……!」

 虎碧は絵の中で繰り広げられる光景に言葉もなく絶句したが、龍玉は、

「あー!」

 と、思わず叫び声をあげた。

「あの尼僧、あたしらが捜してた光善女王だよ!」

 虎碧は気付いていたが絶句して言葉に出せなかった。ただ龍玉に頷くのみ。人相絵を見せてもらったので、女王と分かっていたのだが。

 なぜ絵の中で、上空から落ちてきて、蓮華の中に吸い込まれるのか意味がさっぱり不明で困惑も禁じ得なかった。

 香澄と世界樹の子どもは、相も変わらず静かなものだった。

「あー!」

 他の三者が静かにしても、龍玉は関係なく声を上げた。今度はと言えば、女王を吸い込んだ蓮華が白蓮のごとく光ったかと思えば。

「虎!? 翼もある!」

 という声が抑えられずにあがった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ