エピローグ
ベラバイとのツーマンコンサートを終えて、お疲れ会をすることとなったアービス。
大衆酒場の一角で、長テーブルに座るメンバー。
「わざわざ酒場で開かなくてもよかったのでは? お酒の飲めないメンバーもいるのに」
エリオットが遅れて到着し、クリフの隣に座った。
「エリオットがエスタと酒場で打合せしてるのがおもしろくなかったんだって」
「おやおや」
リアンとクリフがエリオットを恨めしそうに睨んでいた。
「どうでもいいけどお腹空いたー! エスタ遅くなーい!?」
事務仕事で商会から向かうはずのエスタとエリオット。ところがエスタの姿だけなかった。
「帰りがけにロズリー君がファン襲撃の件で謝罪に来まして。もしかしたらエスタさんは来れないかもしれませんね」
「エリオット、これ以上二人を苛つかせるな」
リアンとクリフの席からは、不穏なオーラが漂っていた。
「あ、エスタさんが来ましたよ!」
キョロキョロと席を探すエスタ。彼女の鞄からは花束が覗いていた。
「おやおやロズリー君もやりますねー」
「エリオット」
「あ、いたいた! お待たせしてすみません!」
エスタがみんなの元に駆け寄る。
「ええと……」
エスタはどこに座ろうかと視線を動かした。
手前に座っていたリアンの隣が空いていたが、彼と目が合うと思わず剃らしてしまった。
告白から数日が経っていたが、まだ気まずさが残っていた。
そこでクリフに視線を向けた。
ところが、クリフは隣に座すエリオットをチラチラ警戒しながらここは駄目だとジェスチャーしてみせた。
「?」
「エスタこっちおいで」
「カッシュさんは酒に酔うと女の人に甘えるから駄目ッス!」
真ん中のカッシュの隣に行こうとしたが、ディーゴがそれを止める。
「エスタさんは俺が命に代えても守るッス! こちらへどうぞ!」
ディーゴが勢いよく立ち上がって自分の隣を指した。
そんな熱い想いでお酒を飲みたくはないと、エスタは聞こえない振りをした。
ガーンというディーゴのショックな顔に効果音が流れた。
エスタは端に座って空腹に苛立つルルを見つけると、壁の間に無理矢理体を捩じ込んで座った。
「失礼しまーす」
「はぁ!? なんで俺の隣に来るわけぇ~!? 狭いんだけど!」
「は~……ルルの隣は落ち着くな~」
「おいコラ聞いてんのか? あっち行けコラ」
「では皆さん席についたところで乾杯でもしますか」
エリオットがグラスを持った。
「今日はエリオットが掛け声担当?」
「私ですか? うーん、気の利いた言葉も思い付きませんし、みんなで来年の目標を叫んで乾杯しますか」
いいね!と賛同する。
「では、アービス来年の目標はーー」
「億万長者!」
「市場拡大」
「女の子を笑顔に!」
「俺がいっちばーん!」
「技術向上ッス!」
「最高のパフォーマンス」
またいつものようにバラバラのメンバー達。
「ちょっと! どう考えても来年の目標はコンサートホールでの単独公演ですよ!」
エスタの力説に「おー!」という拍手と歓声が上がった。
「ゆくゆくは国家規模の案件を受けるほどの国民的アイドルを目指す!」
立ち上がり、一際高くグラスを掲げるエスタ。メンバーも高らかに答えた。
「トップアイドルになるぞー!」
アイドルの最も身近で彼らを支える立場にあるマネージャーという仕事。
この仕事が転職だと思っているエスタは、これからもマネージャー業に打ち込み、共に夢を叶えるために駆け抜けるつもりだ。
少しのドキドキと、ワクワクを抱いてーー。
完
最後までお読みいただきありがとうございました!
恋愛少なめ、お仕事小説を書こうと奮闘しましたがお楽しみいただけたでしょうか……。
10万字におさめることを目標にして、なんとか達成できたのでよかったです。
また新たな物語で皆さんに読んでもらえるよう頑張ります!




