誰が私を殺した?
リビングは静まり返っていた。
エリオットやメンバーは、少し離れたところで二人を見守った。
エスタとディーゴが、前世で関わりがあったという事実に驚きを隠せない。
この世界では、希に別の世界の人間が転生して現れることがある。
生きていた時代や土地にバラつきはあれど、世界観が一致していることから、実はこの世界の住人は全員が転生しており、時々記憶を取り戻す者がいるだけなのではないかと考えられていた。
だが、前世の記憶を取り戻すこと自体が珍しいので、目の前に二人もいる事実と、さらに前世で二人には因縁があると聞き、驚いた。
「僕が前世を思い出したのは最近です。思い出した時にはすでに僕はアイドルグループに入っていて、エスタさんはマネージャーでした。あなたの最期の言葉を思い出した僕は、辞めさせるために嫌がらせをしたんです」
「なんだそれ」
ルルが呆れて口を挟む。
「前世で因縁があったならお前だけ辞めればいいだろ」
「もちろん僕は辞めるつもりだった。でもエスタさんも辞めるべきだった!」
「何勝手なこと抜かしてんだ。エスタがマネージャーをしてたとしてもお前には関係ないだろ」
「いいえ。エスタさんはマネージャーを辞めるべきだった。だって彼女は、前世で自分が推してたアイドルに殺されたんスよ!?」
「!?」
クリフが静かに、「本当なのか?」とエスタに訊ねた。
エスタはゆっくりと頷いた。
「『アイドルはもう懲り懲りだ』と言って死んでいったあなたが、転生してもまだアイドルに関わっていた。しかもマネージャーという、アイドルを献身的に支える立場になって。そんなの……ひどすぎる。僕はエスタさんをこの業界から解放してあげたかった……!」
「お前、前世のエスタが好きだったっていうエイチか」
「叡智じゃない」
「エスタ?」
「ディーゴが私を殺した人間だって言うから、私も叡智だと思ったんだけど……そうじゃない」
叡智なら今のアイドルとしての地位をなによりも守りたいはずだ。リスクを負ってまでエスタのために行動を起こすはずがない。
「叡知じゃないなら、マリ?」
「……違います」
再び予想が外れて困惑する。
叡智とマリの他に、エスタを死に追いやった人物が果たしているだろうか?
ディーゴは、自分がエスタを殺したのだと言った。
「前世で『僕』とあなたは会ったことはありません」
「あなた、一体誰なのーー?」




