大衆の興味
路上ライブで知名度を上げたアービス。
路上では成果を納めても、単独でコンサートを開くには至らなかった。
そんなアービスが、現在人気沸騰の超売れっ子となったベラバイと、ツーマンコンサートを開くことになった。
コンサートを開けば、チケットによる収益が見込まれる。
ほぼ無料の路上と違い、はじめて大きな利益を見込めるとあって、皆やる気に満ちていた。
さらに業界では、この二組によるコンサートが話題となっていた。
商会の違うグループ同士でコンサートを開催するのは異例だ。
しかも、アービスはまだデビューして間もないグループとあって、集客の助けもなく、共に開催したところでベラバイにとって得はない。
では何故ベラバイはアービスを招待したのか。
「な、な、なによこれー!?」
エスタは、広げられた新聞を見て怒りでわなわなと震えた。
『発覚! ベラバイがツーマンコンサートをする理由』『今話題のベラバイとアービス! 美人マネージャーをめぐる争い勃発か!?』
『誰がマネージャーを射止めるのか』
そう各紙面に大きく報じられていた。
「これは明らかな誤報よ!」
「たしかに。美人ではないな」
「そこじゃない!」
ルルの指摘に悲しいツッコミを入れる。
「エリオットさん! これは断固抗議しなければ! 商会が黙っているということは認めたも同然です!」
「話題性があってよろしいではないですか」
エリオットがデマを放置する構えなので、エスタが詰め寄って抗議する。それをルルが面白がって邪魔していた。
そんなわちゃわちゃする3人とは少し離れた場所で、カッシュ達も新聞の見出しについて話していた。
「実際、ベラバイはどういう腹積もりで誘ったんだろうな」
カッシュの疑問に、リアンが不機嫌そうに答える。
「ロズリーの目的はエスタを取り戻すことだ」
「へー、あながち誤報でもないってことか」
「あのヘタレ傲慢男が何を今さら」
クリフが吐き捨ててリアンも「同感」と頷く。
「エスタさんをベラバイに奪われたくないッス! 絶対コンサートを成功させましょう!」
4人は顔を合わせて頷いた。
「だーかーら! 私とアイドルが恋愛に発展することは絶対にないです! ゼロ! 無! あり得ない!」
「エスタそれ殺傷力高い。あっちに被弾してる」
「……ん?」
エスタが振り返ると、リアンとクリフが胸を押さえて項垂れていた。
同情するように慰めるカッシュとディーゴ。
その様子を見て、エスタはなんだかいやな予感がして背を向けた。
「エスタ~? どした~?」
「……」
まさか……そんなはずない、よね。
だけどこの押し寄せる胸騒ぎのような不安はなんだろう。
二人の気持ちに気づきかけたエスタに、エリオットが耳打ちした。
「心配いりませんよ」
「……エリオットさん?」
「クリフ君は恩人の娘さんであるあなたに責任感と執着を。孤児であるリアンはあなたに母親の姿と愛情を投影しているだけです」
「……なるほど!」
その言葉に思わずほっと胸を撫で下ろす。
もし自身が受け持つアイドルに好意を寄せられたならーー。
エスタはきっと、マネージャーを辞するだろう。
デビューしたの彼らにとって、もっとも身近な女性が恋愛対象になってしまったなら、それは活動の弊害でしかない。
だから、まだ彼らと共に夢を追えることに安堵した。
「マジでエリオットって腹黒~」というルルの呟きまでは聞こえなかった。




