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元男爵令嬢、異世界でアイドルをマネジメント  作者: 千山芽佳


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25/40

どう見ても

 

 ルルがソファで新聞を読みながら横になっていると、練習室からリアンが戻ってきてリビングを見渡した。


「エスタは?」

「カッシュの部屋~」

「また?」


 ムッと顔をしかめるリアン。

 エスタはカッシュの作った曲を聞いて以来、頻繁に製作を支えていた。

 カッシュの曲を気に入ったようで、あんなに部屋に入るのを嫌がっていたエスタが、今では二人きりで引きこもることにも抵抗しないほどだ。


「俺だって振り付け担当してるのに……」


 リアンのぼやきに、ルルはあえて聞こえないふりをした。

 前々からえらくエスタに懐いているなとは思っていた。明らかにエスタに好意を寄せているクリフと、リアンが衝突することも多い。これが恋なら、めんどくさくなること間違いなしである。

 以前、リアンの行動に疑問を抱いたルルに、カッシュがそう見解を述べた。



『今のところ、恋というより愛じゃないかな』

『……は? もっとややこしいだろ』

『そうじゃなくて、女性として惹かれているというより、母親のような愛情を求めてる気もするんだよな。俺達の境遇って家族に恵まれてないし、あの頃の年って恋と母親像を一緒にするところがあるだろ? エスタって年の割にしっかりしてるし、前に助けてもらったとも言ってたしな』


 練習室の片隅で声を潜める二人。

 チラリとリアンに目を向けると、たしかに、誉めてもらうのを待つ子供のようにも見えた。


『……なるほど。恋愛じゃなくて親愛か』

『そそ。だから余計なことせず、本人が答えを出すまで温かく見守ってやろうぜ』




 カッシュの忠告を思いだして、ルルは新聞に顔を埋めて口を引き結んだ。

 階段を降りる音がし、リアンが勢いよく立ち上がる。


「エスタ。出かけるのか?」

「うん。コンサート会場を押さえに」

「俺も行く」

「ありがとう。だけどリアンとルルはこれからフォーメーションの話し合いをするんだよね?」

「それは夜でもいい。心配だから一緒に行く」

「そ? なら一緒に行こうか」


 ルルは新聞越しに二人の様子を窺っていた。

 リアンの感情が背中越しに伝わってくる。

 喜びで尻尾を振る犬が周りに花を咲かせていた。


「ありゃどう見ても恋だと思うぜー?」


 誰に聞かせるわけでもない、紙面に向かって一人ごちた。



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