盗作?
結局、失くした魔道具は見つからなかった。
エリオットが音楽家から再度音源データを受け取り、2曲目の練習が始まった。
練習も順調に進み、デビューまで1週間を切っていたアービス邸に、マッドから急ぎの連絡が入った。
「これは……、どういうこと!?」
マッドが持ってきた映像記憶装置の魔道具を見て、全員が言葉を失った。
「ね! これヤヴァイわよね!」
そこには、まさに今練習していたアービスの新曲が流れていた。
しかも歌っているのはアービスではない。全く知らないアイドルが歌っている。
「あーしも驚いて! 途中から映像を撮ったのよぉ! 撮影禁止だけど!」
「なんで俺達の曲を知らないアイドルが歌ってるんだよ!?」
「こいつら誰だよ」
「今年デビューしたホップレのアイドルグループよぉ。これやっぱあんた達の曲よね!? 盗作!? 流用!? どっちにしてもヤヴァくなぁい!?」
あまりの衝撃に、映像装置の前で呆然と立ち尽くした。
仕事を抜け出して駆けつけてくれたマッドは、魔道具は置いていくと言って帰っていった。
心が落ち着かないまま夜になり、エリオットが戻るのを待ってメンバーは再びリビングに集まった。
「なるほど……。全く同じ曲ですね」
「作曲家が横流しした可能性はありますか?」
「ゼロではないですが、再度音源を受け取った時は普通でしたので、可能性は低いかと」
この世界の作曲家には印税などの収入は存在しない。曲を作って代金をもらったらおしまい。物と同じで名前は残るが所有権は購入者に渡される。つまり、エリン商会が作曲家にお金を支払っているので、作曲家にしてみれば、トップアイドルが歌う以外は大きな問題ではないのだ。
「音楽家にも確認してみますが、それより紛失した魔道具を使われた可能性が高いでしょうね」
「私もそう思います……。こんなことになってすみません」
一週間前に魔道具を紛失してしまったエスタが、憔悴して深く頭を下げた。
「誰かが拾って売ったのか」
「あの、エスタさん、ホップレって出所不明の音源も使うんスか?」
みんなが何かに気づいたようにハッとし、視線がエスタへと集まる。
「ホットプレインはよほどのことがない限り出所不明の曲を使いません。リスクもあるでしょうし、楽曲提供には困っていませんから」
「やはり……お詳しいんですね」
「? そりゃ、働いていたので」
なぜかリビングが静かになっていた。
「なーエスター、本当に失くしただけ~?」
ルルの質問に首をかしげる。
ディーゴはきまづそうに俯き、カッシュは慌ててルルの口を塞ごうとした。
「あ……」
そこでようやく気づいた。
私は疑われているのだと。




