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セザール視点 3

 陛下の怒鳴り声と、世話を任されていたレイモンドの乳母の兄である伯爵の怯えた姿。


 根幹をなす貴族達の前で絶縁され、怒りと恥辱にワナワナと震えるローランド老公。


 カオスと言ってよい雰囲気の中での新たな王太子の擁立。レイモンドと王女の婚約破棄。レイモンドを王弟の地位へ戻す発表とレイモンドのローランド公爵との絶縁。


「子爵に王太子の位をくれてやる為の婚約ではなく、この先が短い二人に、人並みの人生をと慮っての婚約だったのですから、まあ、当然ですね」


 と淡々と締めくくる宰相。


 実にサイコパスらしいシナリオだ。自分の王太子発表の場をこんな風に演出するヤツは他には居ない。この場で司会進行を表情一つ変えずこなす宰相と、新王太子は相性が良いのかもしれない。


 議会は大混乱の中、幕を閉じた。


 ローランド公爵家に反感を持つ者達にとっては朗報であり、婚約者の居ない若い娘を持つ親にとっては、又とない夫候補の出現だ。


 王太子発表の時、王配を狙い色めき立つ視線が公子へ集まったが


「私は戦いの女神の子孫、我が子を王座に据える気はない。故に火種を生む存在を産み出さない為に、妻を持つことはない。私の後は我が娘であるツェツェリアとセザール大公の子を王太子に据えることを、ここで、皆に約束しよう」


 と、宣う。戦いの女神を持ち出されれば、どの貴族達も

推し黙るしかない。


 はあ、この手紙を見越してのこの用意周到さには脱帽だ。自分の身辺もコントロールできないのか、と、でも言いたげな先ほどの視線がイラつきを増幅させる。

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