表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/105

王太子視点  1

 顰めっ面を作ったまま、フラフラとした足取りで門の前に停めてあった馬車に乗り込むと、サッとカーテンを引いた。


 ニヤける顔を必至で我慢し、笑い出しそうになりながら馬車に乗り込んだのだのだ。


 馬車が動き出したのを確認して、フルフルと身体を震わせながら、声を立てないように笑う。


「クッ...」


 声を出して爆笑しそうになるのを何とか堪えて、椅子に座り直す。


 証拠が詰まった現場は更地

 洗脳した本人は死亡済み

 正しく完璧


 そんなにツェツェリアが気に入らなかったのか...


 いや、違うな、ツェツェリアが気に入らないのではなく、私の感心が向いた女性の存在が気に入らなかったんだ。まったく、どう足掻こうと、私の気持ちがマリッサに向くことなどないというに...


 あの熱の籠って目は恋慕


 気遣う言葉や行動は尊敬や敬愛などではなく執着


 ここで命を奪われるには惜しい頭脳だと、ただ、使えるかも?と拾った駒だったが、予想外の動きをしでかして、手におえなくなり処分しただけ。


 嬉しい誤算は、全ての罪を引き受けて消えてくれたことだ。


 ニヤニヤが止まらない口元を、誰も居ない馬車の中で、誰に見られているでもないが、右手で隠し喜びを噛み締めた。


 馬車が止まると、城内に用意された自室へ足早に向かい、急いでドアの鍵をかける。人に声の聞こえぬ奥の寝室へ駆け込むように入り、念の為に鍵を閉める。


「グ、グハハハ」


 我慢していたものを吐き出すように、ひとしきり腹を抱えて笑う。笑い過ぎて腹が痛い。


「はあはあはあ」


 息切れしたまま、身体をベッドに投げ出した。


 後は叔父様だな。欲を掻かないように、少しばかり忙しくしてもらえばいい。


 取り敢えず、公爵にでもして、家族をバラバラにしよう。差し詰め、息子は留学させ、娘は外国へ嫁がせよう。なあに、もう直ぐローランド公女を迎えに豪華絢爛に設えた使節団が来る。これから、4日間ローランド公女を主役とした夜会や茶会、ガーデンパーティーにパレードが繰り広げられる。若い女性なら羨ましがるだろ。説得するのは容易だ。


 息子も、外国の楽しさを目の当たりにすれば、父親からの圧力からの解放も相まって、留学に飛びつく事だろう。まあ、向こうで至らぬ遊びを覚えなければ良いが...


 太陽とスコッチの国、バランがいいな!カジノにオープンバル、大道芸人達が広場に陣取り、娼館や奴隷館が街のあちらこちら点在している。一番の目玉は闘技場だ。奴隷達が猛獣と闘ったり、奴隷同士闘ったり、お金を賭けて楽しむ。大負けしその場で払えなきゃ、身ぐるみ剥がされて、それでも無理なら、出場する側に回るのだが。


 叔母様には若いツバメでも当てがい、田舎の別荘にでも引っ込んで貰えばよい。


 差し詰め、才能のない売れない画家、若い吟遊詩人辺りで探すか...。


 誘惑しろなんて言わない。


 ただ、出会いの場を用意して、彼らにチャンスを作ってやればよい。彼らにとって、叔母様など良いカモだ。


 広場には裕福なマダムを食い物にする、見目の良い若者が沢山いる。


 素性を確かめて、良さげなのがいたら、洗礼され雰囲気に飾りたてて、叔母様のご機嫌伺いに連れて行くか...ついでに南のバルカンダにある別荘をプレゼントしよう。あそこは年中過ごしやすくて、ワインやフルーツも美味しい。夏は暑く、冬は極寒の王都に帰って来るのが辛くなるだろ。


「ははははは、サイコーじゃないか!」


 王太子は高揚した気持ちのまま筆を取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ