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【115万PV超】異端者アルデラの魔導書《grimoire》  作者: unnamed fighter
【第五章】死闘

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第48話 大きいのと小さいのどっちがいい?

 アイザムを拠点にしてから二か月が経った。


 この二か月の間に大きなニュースと小さなニュースがひとつずつある。



 なあ、良いニュースと悪いニュース……、どっちから聞きたい?


 そんなハリウッド映画のワンシーンみたいな展開はなく、どちらも良いニュースだ。


 大きい方は準勇者《隕鉄》クラバー・ランドフォースのパーティーが北方大陸のローレンブルグ地方を奪還したという知らせである。これで遂に魔族の手からかつて人族が支配していた領土をすべて取り戻すことができたのだ。


 さらに勇者パーティーと三つの準勇者パーティーが魔境入りしたことによって魔王との戦いは最終局面を向かえる。


 この知らせにアイザムの町は大いに沸いた。その日はお祭りのようだった。どのお店に行っても飲み食い無料の大判振る舞いで、誰も彼もが酔いしれた。



 そして小さい方は次元が違いすぎて恥ずかしいのだが、勇者が世界のために戦っている一方で、僕らはクエストを順当にこなして『極刀』のランクがシルバーに昇格を果たしたことだ。


 二か月でシルバーにランクアップするのは冒険者の中でも早い方らしい。


 冒険者ランクなんてどうでもいいが、護衛料がランクに比例するから最短で昇格するクエストを優先してきた結果だ。


 東方大陸へと向かう資金も順当に増えてきて、あと数週間もあれば次の拠点へ向かう目標額に到達する。

 

 しかしながら、ギルドが運営する冒険者用のアパートに引っ越そうかと考えている。こちらは年間契約すれば宿屋よりも日割り計算で安く部屋を借りることができる。


 ギルド以外でも知り合いが増えてきたし、僕を差別する人間もいない。なんといっても気候が良くて魚介類も新鮮で美味い。さらに中立都市であるアイザムに滞在している限り、絶対とは言い切れないが異端審問官などの刺客に襲われる可能性は低い。


 とにかく良いこと尽くしで居心地が良いのだ。



 刺客の代わりに、たまにインプのアルトが顔を見せては悪戯いたずらをして去っていく。服や物を隠したり、食べ物を勝手に食べたりして気を引こうとしている様子。 

 非常に小賢しいが憎めない。


 どうやら彼女は僕に恩を売る機会をうかがっているようだ。素直に「仲間にいーれて!」と言えばいいのに素直になれないのはインプの習性なのだろうか、僕としては幻惑魔法が使える彼女はいつでもウエルカムである。


 ひょっとしたら仲間になりたいというのは単なる僕の思い込みで、本当に悪戯いたずらしに来ているだけかもしれないので、とりあえずタイミングは彼女に任せようと思う。



 それからクエストのかたわら僕はミレアが勤める教会施設バベルの門に入り浸って内緒で禁書を読ませてもらっている。


 ミレアが以前語っていたとおり、禁書に記された内容は興味深いものばかりだった。中には突拍子もないトンデモ科学ともいうべき物もあるが、ミレアがはまったのも理解できる。



 そして迷宮から持ち帰ったアルデラの魔導書は、目次と転生魔法について記されたページ以外は特殊な解除術式が必要であり、特定のプロセスを踏まないと読み進められないようになっていた。


 その方法を知っているのは、おそらくアルデラだけなのだろう。


 鍵が掛かっていない転生魔法のページからは、「やれるものならやってみろ」と声高に叫ぶアルデラの強い意思を感じる。


 施設には本だけでなく呪われた鎧や呪いのスクロールなど禁忌アイテムも保管されているが、ミレアは興味がないからそっちの倉庫に入ったことはないと言っていた。


 読書だけでなくミレアから精霊とはなにか、加護とはなにか、それから枢機教会の成り立ちや精霊信仰など色々なことを教えてもらった。



 すっかりミレアと意気投合した僕は、彼女の指導を受けながら加護を習得するとめ勉強に勤しんでいる。


 メジャーな精霊は、


 火の精霊サラマンダー

 風の精霊シルフ

 水の精霊ウンディーネ

 地の精霊ノーム

 光の精霊アニマ

 闇の精霊シェイド


 の6種。他にも様々な精霊がいて、加護とは彼らに祈りを捧げることによって得られる効果のことを指す。


 詠唱は【祈りを捧げる精霊】+【対象者(物)】+【効果】+【使用目的】の順で構成する。


 例えば以前ラウラが野営のときに唱えていた。


【精霊サラマンダーよ】+【我に】+【ささやかな灯と】+【やすらぎを与えん】


 という風になる。


 この順番が前後してしまうと加護を受けられないこともあるそうだ。この辺は意外とテキトーであまり気にしなくてもいいとのこと。でもやっぱり基本は大事。

 また何度も連続して使うと精霊が応えてくれなくなったりするらしい。


 精霊がへそを曲げてしまうのだろうか。


 様々な精霊に祈りを捧げるのは悪いことではないけど、ひとつの精霊に祈りを捧げ続けた方がより高い加護を受けられるそうだ。


 そこで僕が選んだのは光の精霊アニマだ。


 精霊アニマは治癒系に特化した精霊で、高位の加護ともなれば切断された腕も繋ぐことができるという。


 魔導士の中でも回復魔法を使える魔導士は限られているため、精霊アニマの需要は他の精霊に比べて高いらしい。


 また特質として魔法反射がある。この加護は光の精霊からしか受けることができず、精霊との親和性が高くないと加護が受けられない。


 魔法がひとつしか使えない僕にとって魔法が効かなかったり、反射してきたりする相手は脅威そのものだ。


 異端審問官に魔法を反射されてしまった経験から対策を練るためにも、光の精霊について知る必要がある。だからミレアに師事を仰いだのだ。



 祈りの捧げ方に決まりはなく、なんでもいいらしい。要は気持ちが大事という話だ。


 教会と同じスタイルでやるのは気に入らないから、日本人らしくニ拝ニ拍手一拝で祈りを捧げている。

 

 日に三度、同じ時間に光の精霊アニマに祈りを捧げるようになったのだが、祈りを捧げ始めてから二週間、未だ僕の熱い想いは届かない。一方的の片思いである。


 痛み止め程度の加護ならすぐに精霊が応えてくれるそうなのだが……、僕はまだスタート地点にも至っていない。


 やはり僕が異世界人だからなのか?

 それともイジメられているのではないか?

 そうだ、きっと精霊にシカトされているのだ!


 精霊ハラスメント専門の相談窓口はどこか。




 執筆が追いつかなくなってきているため土日は更新のお休みをいただく予定です。よろしくお願いします。

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