表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【115万PV超】異端者アルデラの魔導書《grimoire》  作者: unnamed fighter
【第二章】出立

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/291

第25話 疾風の用心棒

 罠にハマったのはわざとだよ、残念でした!

 なんて調子のいいことを考えていたときだった。

 

 ボウッと松明に火が付き、物影から四人の男たちがのそりと立ち上がる。

 森にいたビール腹の行商人と若い衆の男たちだ。


「げははははっ! いい気味だぜ!」

「もう一匹をワザと逃がして正解でしたね、旦那」


「ああ、うまいこと変態野郎を連れてきてくれたな」


「これが仮面魔道士の素顔か、なかなか男前じゃねぇか、うひひ……」


 なんだ? いま背中がぞくりとしたぞ……。


「ふん、こんな檻でこの仮面魔導士様を捕まえたつもりかい?」


 そう言いながら僕はローブとバスローブを脱いで裸になった。


「な、なにしてやがる!?」おっさんが声をあげる。


「なにって、そりゃ顔を隠して仮面魔道士に変身するためだけど?」


「もう顔バレしてるだろうが! そもそも服を脱ぐ意味がねぇ!」


 それもそうだな、と僕はローブを羽織り直す。


「ちょ、調子に乗りやがって小僧が……いきがっていられるのも今だけだ!! その檻は特別な鉄で出来ているぅぅぅ!」


 う……、まさか、また魔法無効化パターンですか? それはヤバいですね……。


「も、もしかして……魔法が効かない、とか?」


「いいねぇその顔! ひひひっ! ああ、正解だよ! その檻はすべての属性魔法を無効化するんだよぅ! うひゃひゃひゃひゃ!」

 

 まったく、いかにも悪役っぽい良い笑い方をしやがるぜ。

 だが、これはヤバぞ。あまりにも無策で迂闊だった。ここ最近ヒャッハーと自由になった解放感から調子に乗っていた。もっと慎重になるべきだった。


 このままじゃカノンちゃんがアルトが……、僕の貞操が奪われてしまう……。


 ん? 待てよ。すべての属性魔法だって?

 属性魔法って属性がある魔法ってことだよな?

 じゃあ属性がない魔法はどうなんだ?


 えいやっと黒球を生み出してみるといとも容易く鉄柵が丸い形に消失した。


「へ?」


 鉄柵に出来た穴のようにヤツらは眼を丸くしている。


 僕も自分でやっておいてちょっと驚いている。

 魔力そのものが練れなかった魔法陣と違って、やっぱり無属性なら檻を破壊できるようだ。


「ひえ!」


 男たちは情けない声をあげて後ずさりする。だがもう後の祭りだ。今さら謝っても許してあげないんだからね!





「お前たち……、よくも僕の大事なカノンちゃんにこんなことをしてくれたな。しかも二度も……、生かしちゃおけん」


 怒りに声を震わせながら僕は男たちににじり寄る。


「ううっ! 先生ーっ! 先生ーっ! 出番ですぜ! お願いします!」


 行商人のおっさんが後ろを向いて叫んだ。


「やれやれ、このまま出番がこないかと思ったよ」


 ぬっと暗闇から現れたのは黒髪の少年である。黒い外套がいとうに、左右の腰に片手剣をそれぞれ一本ずつ帯刀している。

 まったく気配がしなかった。

 相当な手練か、もしくは単に存在感の薄いヤツだ。


「先生! 約束どおりこいつを倒したら倍払う! やっちまってくだせぇ!」


 うーん、なんともお馴染みのセリフだこと。最近はめっきり聞かなくなったけど、自分が言われる日が来るなんて感慨がある。


 しかし、こいつ……ちょっと強そうだな。

 二刀流だし全身黒ずくめだし、声もイケメンだし、なんか物腰が場慣れしている。

 できる男のオーラを感じる。


「君が死ぬ前に俺の名前を教えてあげよう。俺の名は――」

《アナザーディメンション》


 少年が名乗り終える前に僕は魔法を放った。彼の足元に穴が開く。黒の剣士は突如足元に発生した穴から地下へと落ちて行った。


「うわぁぁぁっぁぁぁぁっ!」と叫ぶ声が自由落下速度に反比例して遠ざかっていく。


 僕は彼の足元に直径一メートルの黒球を発現させて即席の落とし穴を作りボッシュートしたのだ。


 穴の中からバシャーンと水が跳ねるような音が木霊してきた。


 どうやらポイズンアロースライムで満たされた水槽に落ちたようだ。


 生きているといいなぁ、あの黒の剣士。たぶん大丈夫だろ、あんなに黒いんだから。黒イズパワー。


「おい、お前ら……覚悟はできているんだろうな?」


 僕は残された男共に視線を送る。


「ひぃぃぃぃっ!」



◇◇◇



 その後、僕はヤツらに旅に必要な物資の一切合切を明け方までにすべて用意させ、城下町の衛兵に誘拐犯として突き出した。

 衛兵の前でアルトたち被害者の証言の元、本人たちは素直にゲロしてお縄となった。


 そいつらの処分についてはエリテマの異端者が大神官によろしく言っていたという伝言を添えて。



 そしてアルトはカノンちゃんをインプの里まで送り届けるといって、再びカノンちゃんと一緒に飛んで行った。


 つまりアルトだけ戻ってくるということなのだろうか?



 さて、物資の調達もすんだし明日には出発だ!

次回で二章が終わり、三章【刺客編】が始まります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ