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【115万PV超】異端者アルデラの魔導書《grimoire》  作者: unnamed fighter
【第二十五章】決戦

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第217話 サプライズ

 頭蓋が吹き飛ぶ覚悟をしていたが、リザは両手で僕の頬を挟み、「見たければ妾のを見れば良いのじゃ」と照れながら口をすぼめた。

 あまりの可愛さといじらしさに、このまま寝室に連れて行ってむちゃくちゃしたい気分だが、ムスコと気を落ち着かせて僕は全員に告げる。


「レイラが家にいるならちょうどいい。今から彼女に会いに行ってくる」


「まさか主よ、ひとりで行く気ではなかろうな」


「何人も引き連れていったら警戒される。そんな人間と交渉のテーブルに付くと思うかい?」


「それはそうじゃが……」


「だからリザ、キミはここで待っていてくれ。たとえ戦うことになっても今日明日に戦う訳じゃないんだ。さっき伝えた作戦通り、ちゃんと日程を調整してから戻ってくる」


「……うむ、気をつけるのじゃぞ」


「先生もそれでいいですか?」


「りょ、了解しました」




 そして僕は現在、時空転移魔法を使ってローレンブルク家の庭園にやってきた。

 もうすぐ日が沈む。庭師や使用人たちの姿は確認できないが、得意のハイディングを駆使してレイラがいる部屋のバルコニーに近づいていく。


「ヴァル、頼みがある。力を貸してほしいんだ」


 僕の呼びかけにヴァルは答えない。


「僕はレイラを仲間に加えたいと思っている。できれば戦闘を回避したい、けれど――」


『戦闘になった場合に手を貸せというのであろう』


 ヴァルの声色はくすんでいた。


 分かっている。都合よく使われて気分が良いはずがない。ましてやヴァルは神だ。

 それでも今はヴァルの力が必要だ。


「ああ、説得が失敗したら僕は彼女に決闘を申し込む。さっきも言ったが僕に勝ち目はない。だから頼む、補助魔法だけでいいんだ、力を貸してほしい。それともローレンブルク家の者とは戦いたくないか?」


 僕の問いに対してヴァルは静かに口を開く。


『互いの合意による決闘ならば我が口を出す道理はあるまい。だが片方に肩入れするのはフェアではない』


「ヴァル……」


『しかしながらユウの言う通り、かの者と正面からやりあえば間違いなくられるであろう。たとえユウが死亡したとしても、その魂と身体を我が引き受けるだけだが、この旅がこのようなところで終わってしまうのは、いささか興ざめだ。そして我が見捨てた者たちに手を差し伸べたその慈悲の心に免じて、補助魔法のみという条件で我の力を〝貸し〟てやろう』


「本当か!?」


『これも最初に結んだ契約のうちだと解釈した』




 バルコニーの直下からレイラの部屋を見上げる。

 殺気を放つとレイラがバルコニーに現れて顔をのぞかせた。僕と彼女の目が合う。


 少し驚いた表情をした彼女に向かって手を振ると、バルコニーから姿を消して部屋に戻っていった。

 それを確認した僕は前回、口論となった東屋に向って歩き出す。

 

 しばらくすると彼女は僕が待つ東屋へとやってきた。普段着に太刀一本という軽装である。ただし、全身を纏うオーラに微塵も緩みがない。


「あんたはいつも突然現れますね」そう言って溜め息を付かれてしまう。


「人生にはサプライズが必要だからね」


 気障ったらし僕のセリフをレイラは呆れながら聞き流す。


「私とは二度と会わないのではなかったのですか?」


言い方がトゲトゲしいな、前回のことを意外と根に持っているのかも。


「そのつもりだったけど事情が目まぐるしく変わってね」


 なんて勝手な人でしょうとレイラは嘆息する。


「一緒にいた恒竜族の彼女はどうしたのですか? 変に誤解されて竜族の逆鱗に触れるのはだけは、ご免です」


「大丈夫、彼女もキミと会うことは了承している」


「……それで、一体なんの御用でしょうか?」


「キミにとって良い話を持ってきた」


「良い話? あまり良い予感はしませんが……」


「実は魔境に行って魔王と停戦の交渉をしてきたんだ」


「なっ!? 魔王と停戦交渉!?」


 彼女の涼しげな顔が一変した。


「ああ、停戦協定を結ぶことができれば魔王軍は完全武装解除する。もちろん条件はある」


「その条件とは?」


「超級召喚陣の破壊だ」


「超級召喚陣の破壊!?」

 

「さすが最高神官様の護衛を勤める勇者さまだ。超級召喚陣の存在を知っているんだね?」


「あ、あなたこそ……どうして教会の最重要機密である超級召喚陣を知っているのですか?」


「それを言ったら僕に教えてくれた人が命を狙われる危険があるから教えられない。それにそんなこと今はどうでもいい。破壊するにはキミの協力が必要だ。キミなら召喚陣がある摩天祭壇まで行けるんだろ? そこまで案内してほしい」


 レイラの表情を見れば次のセリフを予測することは容易い。


 それほどまでに彼女は呆れ果てているのだ。


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