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【115万PV超】異端者アルデラの魔導書《grimoire》  作者: unnamed fighter
【第二十二章】勇者という名の光

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第191話 始動

 僕の胸中に渦巻いているのは、後悔とやるせなさだった。


 感情的になって怒りをぶつけてしまった。

 前世の記憶のないレイラには、リタニアスへの思い入れなんてない。彼女の言うように、勇者がカインを離れている間を狙って城壁の内側に魔王軍が転移してくる可能性は排除できない。リタニアスは囮で本命はカインかもしれない。

 しかし、それならアナスタシアの手紙にそう書いてあるはずだ。


 もっと上手く交渉することはできた。彼女には躊躇ためらいがあった。救済か守護かの狭間で揺れていた。

 彼女に線を引かせたのは僕だ。


 ただ、譲れない物はある。

 カインから離れられないのならば、困っている人を助けに行けないのなら、彼女は勇者であるべきではない。ただの近衛隊長であるべきだ。

 なぜレイラに勇者の称号を与えた。

 彼女を鳥籠に閉じ込めた最高神官が許せない。




 現在、魔法陣を足場にして僕とリザはリタニアス城の上空から城下を見下ろしている。


 レイラと別れてから一分と経っていない。

 飛翔術ではどんなに早くても到着まで半日近くの時間を要す。だから僕は時空転移魔法による移動を選択した。


 思っていたとおり、元の世界を中継地点にすれば一瞬で移動することができた。

 おそらく行ったことのある場所でないとこの方法は使えない。危惧していたリザの変化だが、髪と瞳の色が変わっただけで姿形はリザのままだった。


 そして、アナスタシアの手紙に書いてあったとおり、すでに戦闘は始まっていた。

 城壁は破られ、王都の門も突破されている。魔王軍が王都になだれ込んでいる。

 大型魔獣に魔人の軍勢、正確な数は分からない。

 人々は悲鳴をあげて逃げ惑い、兵士の怒号が飛び交う城下はどこも敵だらけだ。この中にゾディアックもいると見て間違いない。


 魔王軍はこの日のために転移魔法の精度を向上させていたのだ。度重なるカインへの転移もその一環だろう。カインが狙われていると思い込ませ、人族の注意を向けさせた。

 実際の狙いはリタニアスだったのだ。その真意は分からないが、魔王は陸続きに侵攻し着実に陣地を広げることを選んだ。

 これからはこの光景が他の国でも繰り返される。ここで止めなければ、もっと多くの人が死ぬことになる。


 落ち着いて戦況を見極めろ。やるべきことを見極めろ――。


 この乱戦状態だ。アルゼリオン帝国で魔王軍を殲滅したヴァルの大規模魔法は当然使えない。この中に飛び込んで斬り伏せていくしかない。


 最優先はフィオナ女王の確保、次にイザヤやデスピアたちと合流する。

 リタニアス城に掛かる跳ね橋門の防衛線は決壊し、騎士たちの間をすり抜けた魔人や魔獣が次々に城の中へ攻め込んでいく。

 僕とリザ、ふたりで手分けしてフィオナ女王の捜索に当たりたいところだが、城下で戦うリタニアス軍は劣勢だ。このまま街の人たちが犠牲になるのを見過ごせない。

 

「リザ、城外の敵を頼めるか?」

「任せるのじゃ。どこまでやって良い?」


「派手にやってくれ、竜族が加勢したことを知れば魔王軍は間違いなく動揺する」


「ふむ、では手始めに少しビビらせておくかの」


 すーっと息を吸い込んだリザは、ドラゴンの咆哮を上げた。

 耳をつんざく雄叫びが王都中に響き渡る。空気がビリビリと振動し、絶対強者の威嚇によって敵味方関係なく動きが停止した。誰もが巨大な翼を広げるリザを見上げている。


「行ってくるのじゃ!」


 リザは翼を羽ばたかせて戦場に突っ込んでいった。


 僕は城の一番高い場所、謁見の間の窓ガラスをぶち破って城の中に突入する。




 




 活動報告「自作語」にも記載しましたが、ここからちょいちょいストレス強めな展開が出現します。ご了承くださいまし。

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