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【115万PV超】異端者アルデラの魔導書《grimoire》  作者: unnamed fighter
【第十四章】魔神降臨

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第120話 魔神降臨

「まさか……本当に……じゃ、じゃあ転生魔法が成功したのも魔神の力――」


「ロイ! 怪我はないか!?」


 息を切らせて駆け寄ってきたのは、シャリー先生だった。精霊術を指導する彼女は聖堂から騒ぎを聞きつけて走って来たのだろう。肩で息をしている。

 

「シャリー先生……」


 すでに僕の姿をした魔神ヴァルヴォルグは消えていた。

 でも分かる。あいつは今も僕の右腕にいる。



 その後、グラウンドの片隅で呼水の呪符が発見された。これは敵意を発して魔物をおびき寄せるために使用される呪符だ。しかも、設置されていたのは高レベルのモンスターをおびき出す強力な呪符だった。

 臨時で開かれた職員会議において、ドラゴンは呪符に反応して飛来したという見解に至る。


 こんなものを誰がいつ設置したかは不明のままだ。しかし、呪符に描かれていた模様から高位の魔導師であることは間違いないとのことだ。




 不穏な空気に包まれた学院を後にした僕は、迎えに来ていたクラリスと歩いている。

 今日あった出来事を面白おかしく話してみてもクラリスはどこか上の空だった。いつも楽しそうに聞いてくれるのに、なにか悩み事でもあるのだろうか。


 浮かない顔の理由を聞けないまま家に着くと彼女は仕事に戻っていった。


 やっぱり様子がおかしい。最近お願いしてやってくれるようになったおかえりのキッスもハグもなかった。彼女はたまにネガティブ思考になるときがあるから、僕の言動によって意図せず、あらぬ勘違いをさせてしまっているのかもしれない。


『ユウ・ゼングー』


 突然、前世の名で呼んできたそいつの名を僕は口にする。


「ヴァルヴォルグなのか……」


『である』


 どうやら夢や幻ではなかったようだ。やはり転生体のロイの右腕にはあのヴァルヴォルグが宿っている。

 三英雄に倒された伝説の魔神、よくある英雄譚のおとぎ話ではなかったのか……。


「急に頭の中で呼びかけるな、ビックリするだろ」


『肉体がないのだから仕方あるまい。それはそうと貴様、あの娘に惚れているのであろう?』


「あ、ああ……。だからなんだよ」


『あの娘も貴様に惚れている』


「ああ、そうだな。なんだ、恋バナでもしたいのか? 魔神のくせに」


 僕の嫌味など崇高な魔神様はまったく意に返すことなく、『もう交尾は済ませたのか?』と無粋なことを言ってきた。


 ぶはっ!

 何も口に含んでないけど思わず吹き出してしまう。


「まだに決まってるだろ!」

『なぜだ? 愛し合っておるのだろ?』

「順序ってもんがあるんだよ」

『やりたくはないのか?』


 言い方ッ!! 神を名乗るクセに下世話な野郎だな!


「やりたいに決まってるだろ!? だけどこっちにだって事情があるんだ」


『事情というのは主に前世で貴様のそばにいた娘らのことであろう』


 ガッデム、なんでもお見通しかよ……。


「そうだよ、クソ……バレバレなのがムカつくな。全部見てたのか? お前の腕をくっつけたあの日から?」


『断片的ではあるがな』


「……ならなんで今みたいに話掛けてこなかった?」


『意識はあっても意思疎通はできぬ状態であった』


「ふん、そうかよ。どうせなら死ぬ前に魔神様のありがたいお言葉を聞きたかったぜ」


『そのような些細なことはどうでもよい。貴様は一刻も早くあの娘と交尾するべきだ。あの娘のためにもな』


「はい? どういう意味だよ?」


『あの娘には呪いが掛かっている』

「の、呪いだって?」


『娘が十四になるまでに性交しないと死ぬ呪いだ』


「は? なに言ってんの? そんな呪いある訳ないじゃん」


『ふむ、信じないのであれば好きにせよ。我は貴様の契約者として忠告したまでだ。後悔はせぬようにな』


 馬鹿馬鹿しい……。エッチしないと死ぬ呪いだって? 企画物のセクシービデオじゃあるまい。


「なあ、ヴァルヴォルグ、ひとつ聞かせてほしいことがあるんだ」


『許す、申してみよ』


「転生魔法が成功したのはお前のおかげってことでいいんだよな」


『その通りだ。我が貴様に力を貸して転生させた』


「……じゃあ、ラウラがどうなったか分かるか?」


『転生しておる』

「ほ、本当か!?」

『うむ、間違いない』

「どこにいるんだ!?」


『それは分からぬ。何者に生まれ変わったのかもな。なにせ突然呼び出されて初めて使った術なのだ。不確定要素も多い。貴様が事切れる僅かな時間で我が設定できた因果は限られておる』


「そ、そうか……」


『しかし同じ時代の同じ世界に転生していることは間違いない』


「同じ時代の同じ世界……、この世界のどこかに、ラウラがいる……生まれている」


 目の前を覆っていた濃い霧が晴れていく。僕の全身は歓喜に震えていた。




ざっくり異世界年表


PAST

|紀元前4000年 極刀、鳴弓、弦槍が魔神ヴァルヴォルグを倒す。

|   歴代魔王と歴代勇者が戦いを繰り広げる

|紀元前300年 フォルクマンが魔神論を発表

|聖令歴元年 枢機教会を創設した偉い人が生まれる。

| ~

|聖令歴1110年 ライゼンが勇者召喚される。

|聖令歴1136年 ユウが異世界に転移する。

|聖令歴1137年 ユウ及びラウラ死亡

|聖令歴1138年 ロイ・ナイトハルト誕生

|聖令歴1150年 ロイ・ナイトハルトが前世の記憶を取り戻す。

|         ???が勇者召喚される。

FUTURE

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