第57話 岩瀬先輩からの電話?
順調に作業が進んでいく。
カタカタとキーボードを叩く音だけが響く生徒会室の中。
テスト用紙をクラスに分ける作業も終え、今はレポートを書いている作業中だ。
今回のテストの結果は正直言って、ビックリしたぐらいだ。
もう少し全体的に点数が低くなるかと思っていたけど、思ったよりも良かったのだ。
3年生の平均は78点、1年生の平均は71点。
ちなみに要くんは全体で49位。1年生の中では18位だ。
やっぱり藤堂家は恐ろしい家系なのかもしれない。
レポートを作成しながらそんな事を考えていると、スマートフォンがブルブルと震える。
画面には岩瀬先輩という文字が流れている。
「どうしたんですか?電話なんて珍しいですね」
「まぁ、ちょっとした用事がね。それよりも、今は学校?」
「はい。今はレポートを作成中ですけど?」
「そう。その作業はあとどのぐらいで終わるの?」
「ん~…、終わらそうと思えばすぐに終わらせますけど?どうせ月曜日にならないと校長と先生に提出できないので。何か僕に用事ですか?」
「まぁ用事と言えば用事なんだけどね。まぁいいや、そのレポートが終わったら私に電話してよ」
「よくわからないですけど…わかりました。できるだけ早く電話します」
プチンと電話を切り、パソコンに目を向ける。
岩瀬先輩が僕に用事を頼むって物凄く悪いことなんじゃないか?と思ってしまう。
だけど、何も聞かずに断るって事も出来ない。
淡々と文字を打っていき、ある程度の文字数まで打ち終わると、保存を選択してパソコンの電源を落とす。
そして、言われた通り、岩瀬先輩に電話を掛ける。
「すみません、今終わりました」
「意外と早かったね」
「確認作業は月曜日にしますから。それで?用事ってのはなんでしょう?できないと思った物は断りますけど?」
「大丈夫、簡単な事だよ。学校帰りのコンビニで待っててくれない?」
「……別に良いですけど」
何だろう…、この裏を感じる感は…。
この展開から考えられるベタな展開は…たぶんこれだ。
1.岩瀬先輩に言われた通り、学校の近くにあるコンビニで待つ
2.しばらく待たされる。イライラする。
3.来たかと思えば岩瀬先輩では無く、会長。
4.会長も「岩瀬先輩に呼ばれた」と言う。
5.僕も会長も何を話せばいいか分からない。
6.その状況を岩瀬先輩は影でニヤニヤしながら見る。
この展開が目に見えている…。
「…本当に岩瀬先輩が来るんですか?」
「ん?あ~、綾乃が来ると思ってるのかな?大丈夫大丈夫、私が行くから。それとも犬塚くん的には綾乃の方が良いの?」
「そうですか。それじゃコンビニに居ればいいんですね。今から出るので15分ぐらいで着くと思います」
「質問の答えは無いのね。まぁいいけど。私は20分ぐらい掛かるからごめんね」
「いえ、それじゃコンビニで」
暖房を切って、生徒会室のカギを締める。
その後、警備室へ向かい、警備のおじさんにカギを渡す。
それにしても、岩瀬先輩が僕に頼み事なんて何か裏があるとしか思えないのは、僕の中で岩瀬先輩のイメージが悪いからなんだろうか…。
新しく買ったマフラーを首に巻き、白い息を吐く。
あと少しすれば終業式。その後は学校主催のクリスマスパーティー。
その後は冬休みだ。
冬休みの後は……、その後はどうなるんだろう?
僕と会長が付き合う、付き合わない関係なく考えたとしても、会長は来年3年生だ。
学校の校則では一応、生徒会の生徒会長職は3年の夏までだと決まっている。
ということは、会長と僕の生徒会も来年の夏までということになるのだ。
「…………」
今まで考えた事は無かった。というのは嘘になる。
だけど、会長の居ない生徒会は考えられないのだ。
生徒会室のドアを開けると会長の笑っている顔が見える。これが僕にとって普通なのだ。
会長の居ない生徒会…。
頭の中に映像ができ始めようとした時、コンビニが見えてくる。
僕は頭を振り、中にある映像を振り落として、コンビニの中へと入った。




