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第42話 文化祭!

 

「あ、副会長さん!食べていってよ!」

「ありがとうございます」


 できる限りの笑顔を浮かべながら渡されるフランクフルトを手に取る。

 フランクフルト屋をやっているのは確か2年生だから友好的である。主に女性にだけど。


 男の人はそれはもう殺気を籠ったような視線を送る人もいるんだけど、もう数カ月も同じ視線を浴びせられれば慣れてしまうのが人間の良い所。


 僕は貰ったフランクフルトにかぶり付きながら見回りをする。

 こういうお祭りは楽しいんだけど、問題も時々起きてしまうから気を付けなければいけないのだ。

 特に、この四條学園の文化祭は2日間行われ、学生以外も参加可能なため、小さな問題が結構ある。と去年の資料に書かれていた。

 問題の代表はナンパ。これは我が学園の生徒を狙って他の学生が来る。

 来る自体は問題ない。それにナンパが成功して、お互いが良いなら僕たちも介入はしない。

 問題なのは断っているのにしつこくナンパをすることだ。

 ホント、迷惑なんだから辞めてほしい…って言ってるそばから…。


「ねぇねぇ、いいじゃん暇なんでしょ」

「暇じゃないです。忙しいですって何度言えば」

「いいじゃんいいじゃん」


 袖のワッペンを見る限り、女の子は風紀委員さんだ

 男の方は髪を染めてだらしない格好をしている如何にも不良といった感じ。

 僕があまり得意でないタイプだ…というか、ナンパの問題は大抵こういう人が起こすから面倒なんだよなぁ…。

 本当は会長に任せたいんだけど、会長に任せてしまうと対象が変わるだけで根本的な問題は解決しない。


「会話中すみません」

「ああ?なんだてめぇ」

「すみません、生徒会です。風紀委員さんに確認事があるんですけど」

「今、俺がこの子と話してるんだからどっか言ってろよ」

「すみません。仕事なので。風紀委員さんいいですか?」

「は、はい!」

「っち」


 はぁぁ…また舌打ち…今日だけで10回以上されてる気がする…。

 僕が来たことでナンパの邪魔をされ、不良さんは睨みながら人ごみの中に消えていく。

 あの様子じゃまだやり続けるかもしれないな…。

 僕は支給されている無線機でさっきの男性の特徴を各委員、先生たちに知らせる。

 もう一度、ナンパをしている所を見つかれば強制排除。それでも中に入ってナンパをしようものなら身元を調べられ、学生ならその学校に連絡。フリーターなら家族に連絡、または警察へ。

 ナンパ程度でどうやって警察を動かすんですか?と会長に聞いたところ、可愛く「ほら、ここって四條学園でしょ。警察幹部には卒業生がいるから。ねっ」と言っていた。

 つまり、「うちの学校を卒業したんだから力になってよ」ってこと。


「すみません、助けていただいてありがとうございます」

「いえ。それよりも大丈夫ですか?」

「えっと…人ごみの中に居たら気分が悪くなってしまって」

「あぁ、なるほど。それじゃ他の人で場所を埋めようかな…」

「だ、大丈夫です…」

「そうですか?顔色は悪いみたいですけど」


 顔は真っ青だし。

 まぁあれだけ迫られたら怖いのは当然だろうけど。


「おや、ナンパしている人がいると思えば副会長の真也くんじゃないの。うちの風紀委員に堂々とナンパなんて綾乃が見たら鉄槌を下す所かも」


 面倒くさい人がきた…。

 携帯電話を片手にこちらへ向かってくる岩瀬先輩を見る。


「まぁまぁそのままナンパを続けてよ。ほら」

「岩瀬先輩…僕がそんなことをして何のメリットがあるんですか」

「損得で動くと必ず損をするよ。これは君より1年長く生きた先輩からの伝言」

「そうですか。それよりももう良いですか?この後、体育館のイベントがちゃんと進んでるのか確認しに行かないといけないんですけど」

「ほう、それじゃ私も行こうかなぁ」

「岩瀬先輩はこの子見てあげてくださいよ」


 付いて来ようとする岩瀬先輩を止めて、さっきナンパされた女の子の方を見るとすでに彼女の友達らしき人が周りにいる。


「こういう事態は予測可能なんでね、対応策も考えているんだよ。まっ、考えたのは綾乃だけどね」

「会長はやっぱり凄いですね。普通、風紀委員がナンパに合うなんて思いませんよ」

「生徒会長がナンパに合うぐらいなんだから考えられると思うけど?」

「……確かに」


 岩瀬先輩はおかしく笑いながら僕と一緒に体育館の方へと向かって歩いた。



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