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最強の暗殺者は田舎でのんびり暮らしたい。邪魔するやつはぶっ倒す。  作者: 高井うしお
第三章

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79話 争いの火種

ごめんなさい……更新し忘れました

 その日、ファリントン領で一番大きな教会で、厳かに葬儀の金が鳴った。参列した貴族達も、館に様子を見に来た領民達もその死を悼んで俯き、涙を流した。


「さて……早いところ出て行こう。死人がうろうろしてはいけない」

「そうだな」

「はい」


 フレドリック達は葬儀が終わる前に、そっとイライアスの領地から出ていった。


「サイラス、妻子の事は私の息子達に任せておけ。きっときちんとしてくれる……巻き込んですまんな」

「いえ、大義の為です。……会いたい気持ちはありましたが」


 イライアスとサイラスは近頃流行りの疫病にかかって死んだとフレドリックは火葬した骨だけを持ち帰った。もちろんそれは帰り道に調達した偽物だったが。


「イライアス、お前の奥方も大層悲しんでいた。あとで叱られるといいぞ」

「そうだな……」


 さすがのイライアスも少し寂しそうな表情を浮かべて、遠くなる自分の領地を馬車の窓から眺めていた。




「……イライアスが死んだ、か。あとあの護衛騎士も」

「は、そのように一報が参りました」


 フェレールはアーロイスの前に跪いて、イライアスの訃報をアーロイスに告げる。アーロイスはその後ろにひかえるハリシュに問いかけた。


「確かか、ハリシュ」

「……取憑かせた夢魔が還って参りました。おそらくは……」


 ハリシュがそう答えると、アーロイスはようやく微笑みを浮かべた。


「そうか……死んだか……なんとあっけない」

「これでほぼ、国内の有力貴族はこちらにつきましたな」

「ああ……ようやくだ」


 満足気に笑みを浮かべる二人に、ハリシュは勇気を振り絞って声を発した。


「あの……我らへの褒美の地は……」

「ああ、辺境だがな。役人を向かわせた。ハーフェンという村だ」

「ハーフェン……」

「住民には金を払って退去してもらう。そこで畑でもするといい。初年度の税は免除してやる。どうだ?」

「あ、ありがたき幸せ……」


 アーロイスの署名入りの誓約書を渡されて、ハリシュは喜びに打ち震えた。


「……お前にはもう少し働いて貰わなければいけないからな」

「は……」


 アーロイスはそんなハリシュを冷たい目で見下ろしていた。ハリシュが部屋を退出すると、アーロイスはそっと窓辺に立った。そしてフェレールに問いかける。


「……フェレールよ。私はこの国の頂点に立った」

「そうですな」

「すべてお前の望んだどおりだ」

「いえ……」


 フェレールが謙遜して答えると、アーロイスはくるりと振り返り彼をじっと見た。


「私はこれからどうすれば良い」

「は……それは……国を富ませ、王家の血統を継ぎ……色々とありまする」

「そうか……」

「では、私もこの辺で失礼したします」

「……ああ」


 フェレールは一礼をすると、部屋を出た。そして先程のアーロイスの表情のない目を思い出して舌打ちした。


「ちっ、小物め……いつまでもお守りが大変だ……」


 ごくささやかなその声は誰も居ない廊下に溶けていった。


 その頃、ハーフェンの村にはアーロイスの命を受けた役人が向かっていた。


「……はあ?」


 そして、唐突な退去通告を受けたリックの父親を中心とした村人達はポカンと口を開けていた。もちろん名無しやヨハンやクロエもである。


「だから! もう一度言うぞ! この村の統治者である王家から退去の通告が出ている。しかし安心しろ。きちんと金は払う」

「金を払うと言われても……」


 村人達は困惑して顔を見合わせた。そして口々に疑問を口にする。


「この村は王家のものだったんで……? 司祭様」

「うーん確かに直轄地ではありますが」


 そう聞かれた村の司祭は一応そうだと頷いた。


「はじめて知った……」

「でも先祖代々、この土地で暮らしていたんですよ。今さら出て行けと言われても……」


 そう村人が言うのも無理もない。それを告げている役人もそう思っていた。しかし仕事なのでそう告げるしかない。


「渡した金で近くの村か町に移り住んでくれ」

「って言われてもなぁ……畑仕事しかした事ないし……」


 事態を納得できない村人と、元々そんなにやる気のない役人との間で膠着状態となった。その時、役人の前にずいと進み出たのは名無しだった。


「みんな嫌だってさ。あんた達帰んな」

「か、帰れと言われても……あんまり抵抗するな。面倒なことになるぞ」

「面倒な事って?」

「その……例えば……そう! 衛兵を連れてきて無理矢理追い出すとか」

「ふーん」


 名無しは役人の顔を舐めるように見た。いかにも人のよさげな田舎役人である。


「ここにいるみんなをぶっ殺すのか?」

「それは……」

「お前は人を殺した事あるか? できるか?」


 名無しに畳みかけられるように問われて、役人は口ごもった。


「……ない」

「なら帰れ」

「そういう訳には……」


 その鼻先に名無しは小剣を突きつけた。


「……俺は、お前達がここにいる誰か一人でも傷つけたら容赦しない」

「お、おい……それを仕舞え」


 役人は慌てた。のんびりした田舎の村でこんな殺気を発する人物に出会うとは思っていなかったのだ。


「おい、役人さん。こいつは本当に強いぞ。口ばっかだと思ったら痛い目あうぞ」


 そう役人を睨み付ける名無しの後ろから声を発したのはリックだった。


「それにな、ここは俺達の大事な畑のある村だ。俺たちだって大人しく退去なんかしないぞ!」


 そのリックの声に、村人達はそうだそうだと声を上げた。農具を持っているものはそれを掲げて役人を威嚇する。


「……とにかく帰れ」


 名無しは役人から村人達へのお触れの紙を取り上げると、びりびりと真っ二つにした。


「お、おい! ……まったく! 覚悟しておけよ!」


 役人達はそう捨て台詞を残して、村を去っていった。わっと村人達は歓声を上げる。


「やった、帰った」

「ありがとうアル!」

「……早合点するな。またあいつらは来る。ちょっと時間稼ぎしたに過ぎない」


 喜ぶ村人達に、名無しはそう忠告した。クロエは不安そうに名無しの手を握る。


「どうなっちゃうの……パパ……?」

「クロエ……大丈夫。守るよ。クロエも……この村も……」


 名無しはクロエの小さな手を握り返して、そう呟いた。


第八回ネット小説大賞二次、残念ながらこの作品は落ちました。けどのんびりペースですがこれからも書いて行きますのでよろしくお願いいたします。

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