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最強の暗殺者は田舎でのんびり暮らしたい。邪魔するやつはぶっ倒す。  作者: 高井うしお
第二章

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48話 暗闇の刃

やがて外がうっすらと暗くなり始めた。まもなく、夕暮れ時である。


「そろそろですかね」


 エミリアが空を見上げながら言うと、ライアンは頷いた。


「ああ……」

「ユニオールに入国すると、すぐに広場があります。中央教会の内部に入るには知らせを寄越さないといけませんし……どちらにせよその付近で一泊する必要がありますね」

「という事はその広場の近くに宿を取りますか……」


 エミリアとフレドリックの話を聞いていた名無しが口を開いた。


「その広場に何か目印になるものはあるか?」

「広場の南に聖人の像があります」

「じゃあ、そこに宿の場所を書いた紙でも挟んで置いてくれ。後から向かう」


 そして名無しはフレドリックを見つめた。


「それまでエミリアを頼めるか?」

「なにを今更……お任せください」


 フレドリックは名無しの肩を叩いた。そして、一行は関所に向かった。


「では、後ほど……」

「ああ」


 関所の列に加わった三人を見届けて、名無しはその場を離れた。ローダック王国との境、ユニオールの都市を護る市壁の一角の茂みに身を潜め、夜が更けて人気の無くなるのを待つ。


「そろそろか……」


 細い月が高く昇っている。名無しは鉤爪のついた縄を使って市壁を登りはじめた。壁の頂上付近で名無しが慎重に顔を出すと、見張りは居るもののこちらには気付いていないようだった。


「あっちむいてろ」


 名無しは小さな花火に火を付けると逆方向にそれを投げた。


「……ん? なんだ?」


 見張りの衛兵が花火の音と光に気をとられているうちに、名無しは市壁を超えた。ようやく聖都ユニオールの内部である。


「……」


 下から吹き上がってくる風に名無しの髪が揺れる、名無しは聖都ユニオールの全貌を眺めた。中央の小高い丘の上に夜の月の光でも浮かんで見える白い神殿。そしてさほど広くない市壁の中にひしめく建物たち。


「あれが、エミリアとライアンの目的地か」


 そして名無しは目を落とした。エミリアの言う通り、街の入り口には広場が広がっている。名無しは目的の像を目視で確認するとするすると下に降りていった。


「あっさりだったな」


 地面に足を降ろし、鉤爪つきのロープを回収した。あとは広場に向かってエミリア達の場所を特定して合流するだけである。


「だよなぁ、これだけ周囲を他国に囲まれていて不用心だよな」

「……!?」


 名無しは背後から急に発せられた声にバッと振り向いた。


「……よう」

「バード」


 名無しの手はすでに小剣に伸びている。


「どうしてここに?」

「どうして、か……結構長い話になりそうなんだが……」


 バードは組織の襲撃から唯一生き延びた男。今後は二度と会うことはないだろうとハーフェンの隣町で言って別れた。遠く離れたユニオールで、しかも名無しが一人になるこんなタイミングで再び出会うのがただの偶然だとは名無しには思えなかった。


「お前を殺さなくてはならなくなったので、ここで待ってた」

「……」

「非情に残念だ」


 バードは軽薄な口調と裏腹に名無しから一切視線を外さず、長剣を引き抜いた。


「ここを特定するのは簡単だったが、お前達ずいぶんゆっくりしてくるもんだから参った参った」

「大人しく引退してろよ……おっさん」


 名無しも双剣を抜き、刃をバードに向けて構えた。


「それがなー、大金積まれちゃ事情が変わるってもんでさ。あの王子、心底お前が怖いらしい」

「アーロイスの事か」

「あんまり段取り悪いんで俺が声かけられちゃってさー……」

「……」

「……かわいいなぁ、クロエちゃんだっけ」

「!」


 バードの口から出たクロエの名前を聞いた名無しは小剣を握り治した。その反応を見たバードは面白そうに名無しを眺めた。


「おお、人間らしくなっちゃって」

「クロエをどうした……」

「それ知る意味あるか? ……お前はここで死ぬのに!」


 突然バードの長剣が名無しを切りつけた。予備動作無しのその動きを名無しはすんでの所で躱した。


「クロエに何かしたのか! 答えろ!」


 今度は名無しが小剣を振りかざし、バードに襲いかかる。バードは軽やかに名無しの放つ刃を避けた。


「くそっ!」


 ギイン、と名無しの剣とバードの剣がかち合った。そしてお互いにすぐに距離をとる。


「……はぁ」


 バードの動きは無駄が無く、名無しは正直手こずっていた。名無しと同じ、殺さなければ死ぬ、という状況の中で磨かれた剣筋だ。


「いい村だった、見知らぬ俺に誰も彼も親切だった」

「黙れ!!」


 名無しは地面を蹴り上げ、一気に距離を詰めると、バードの首をめがけ小剣を振った。


「……おいおい」

「……」


 名無しの小剣は確かにバードの首筋に当たった。一文字の傷口からはつっと赤いちが流れる。


「一撃で殺すのが基本だろうが」


 名無しの刃はバードに当たる直前で僅かにぶれた。致命傷とならなかった首筋の傷をバードは撫でると、冗談じみた口調をひっこめ唸るように呟いた。


「こんなんじゃ死なねぇよ……!!」


 バードは長剣を構え治し、名無しに駆け寄った。そして名無しにその切っ先を向けた。確実にその命を刈取る為に。

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