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最強の暗殺者は田舎でのんびり暮らしたい。邪魔するやつはぶっ倒す。  作者: 高井うしお
第一章

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23話 光の守護者

 この日、名無しはラロを連れて狩りに出ていた。ラロも少しずつではあるが、猟犬として成長を遂げている。今は勝手にあさっての方向に行ったり、獲物に興奮したりといった事が減った。

 村の外の草原は今は真っ白な雪原と化しており、きらきらと反射した光が名無しの目を焼いた。


「今日の獲物はうさぎだ。骨はやるし、お前の寝床に皮をくれてやる。いいな、ラロ」

「わふっ」


 名無しは雪をこぎながら森を目指した。森も雪に閉ざされている。その木の間にスルスルと登って陣取り、名無しはじっと獲物がやってくるのを待った。

 しばらくするとウサギではなく鴨の群れが現れた。名無しはそれを見てそっと矢をつがえた。

 パンッ、っと弦が弓を弾いて鴨を撃ち抜く。


「ラロ! 行け!」

「わんっ」


 矢に射貫かれながらバタバタと逃れようとする鴨をラロが追った。


「よし、良い子だ」


 名無しは木から下りると、鴨を銜えてきたラロの頭を撫でた。


「ん……これは?」


 ふと足下を見ると動物の糞があった。鹿のものではない。この大きさだとかなり大型のようだ。


「こんな季節に……?」


 ここは森のほんの入り口である。この冬の季節にこれだけ大きな獣がここに糞を残す事に名無しは不自然さを感じながら名無しは村へと戻った。


「あっ、パパ帰ってきた」

「どうした?」


 いつもの狩りなのに、ヨハンの家の前には人だかりが出来ていた。


「無事だったか!」

「リック、この騒ぎはなんだ」


 心配そうな顔つきで駆け寄って来たリックに名無しは聞いた。


「それがな、熊が出たみたいなんだ」

「熊? こんな季節に?」

「ああ、それで村で話し合おうとしたらアルが狩りに出たっていうもんだから……」


 名無しはそう言われて森にあった糞のことを思い出した。


「そう言えば、大きな糞が森の入り口にあった」

「……まずいな」


 それを聞いたリックの顔つきが変わった。


「この季節に冬眠してないってことは、きっと腹を空かしている。まいったな」

「どういうことだ?」

「街道で人を襲ったり、行き倒れの肉を食らったりしたらそいつは人の味を覚える。そしたらこの村を襲ってくる可能性もあるって事だ」


 リックはいつになく厳しい顔で名無しにそう言った。


「一匹だろ? 俺が狩ってくる」

「アル、熊だぞ?」

「問題ない。以前の魔獣も俺一人で十分だったろう」

「まぁ……そうなんだが……」

「いけません」


 その時、人々の間からエミリアが進み出た。


「エミリア……?」

「アル、あなた熊を相手に一人でただの弓矢と小剣で挑むつもりですか?」


 名無しが得意とするのは二刀の小剣による近接攻撃だ。名無しの立ち回りを実際目の前にしたエミリアはそれで荒れ狂う熊に対峙するのは厳しいと思った。


「まぁ……なんとかなるだろ」

「アル、冬の熊をあんまり見くびらないほうがいいぞ。村のみんなで追い込んでがんばってやっつけよう」

「しかし、危ないぞ」

「そっちこそ一人でどうするつもりだよ」


 リックも村人も名無しを一人で行かせる事には反対のようだ。その時、エミリアが口を開いた。


「……私も一緒に行きます」

「エミリアさんが?」

「ええ。私の光魔法は通常の獣や人間相手では命を奪うほどには効果がありませんが、動きを封じる事ならできます。その隙にアルが狩りをすれば……」

「いいのか? その……」


 名無しは教会の細かい戒律などは知らない。ただ徹底して暴力を嫌っている風のエミリアがこんな事を言い出したのに少々驚いていた。


「私はこの村に命を救われました。ですからこの村を守らなければ」

「エミリアさん。たぶんあの熊は追い払うだけじゃ無理だよ。可愛そうだけど殺さなきゃ何度でもこの村に近づいてくる」


 リックがそう言うと、エミリアはふっと微笑んだ。


「それでも何人もの犠牲が出る可能性を放っては置けません。まぁ、熊さんにはシチューになって貰いましょう……」


 こうして村人と名無しとで協力して、熊退治をする事になった。


「パパ、大丈夫?」


「ああ、今回ラロは連れて行かないから面倒を頼むな」

「うん……」


 村人達はそれから熊を捕らえる為にどうしたらいいのか話し合った。作戦としては等間隔に森を囲み、森に近づいて行く。そうして熊を発見したものが合図をする事になった。


「今回はこれを使いなさい」


 教会の司祭は村人たちの為にと火の魔法石と光の魔法石の魔道具を特別に貸し出してくれた。この道具があれば魔法を使えない村人でも一時的に簡易な魔法を使う事ができる。


「熊を見つけたものはこの火の魔法石を使って狼煙をあげなさい。光の魔法石はもしも襲われた時の目つぶしになるだろう。熊が人里に出てからでは手遅れになる。皆、気を引き締めておくれ」

「はい!」


 そして明くる日、村人達による熊狩りがはじまった。村人達は一応農作業用のクワや鋤などを構えて、村の前の雪原に集まった。


「熊が捕れたらまた宴だ!」

「リック、油断は禁物ですよ」


 エミリアもこの雪原に立っている。


「もし、懸念されているような人食い熊だとしたらあっちから襲ってくる! 気合いを入れろ!」

「おお!!」


 村人達はじりじりと森に向かって歩を進めた。


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