表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サモナーさんの召喚するだけ3秒間クッキング ~大繁盛! ダンジョン前食堂~  作者: 森田季節
いろんなパン登場編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/51

46 うぐいすパンと緑茶

「リルハさん、記憶違いしてるのかな。いや、まだ中身を見てないな」

 さっきと同じ要領で俺はパンにかじりついた。


 直後、俺の頭にアンパンと同じような衝撃が来た。

 そして、あんの色はしっかりと緑色だった。


「これがウグイスパンか! でも、ウグイスってなんだ?」

 こんな時は当然、説明書を読むのだ。


=====

ご注文の品をお送りいたします。

料理名:うぐいすパン

少し黒みがかった緑色。そして、アンパンとは違ったタイプのやさしい味。それがうぐいすパンです。ちなみに、元の豆はグリーンピースです。同じく緑色の熱い緑茶もけっこう合うかも!? 最近うぐいすパン自体は日本でも減ってるようですが……。

ちなみに、うぐいすとは緑色が美しい鳥の名前です。うぐいす豆も緑色です。

=====


 緑色の鳥か。インコみたいなものだな。

 それにしても、グリーンピースを使って、おいしい味になんてなるのか……?


 これは、ほっこりする味だ。アンパンもそうだったけど、甘いので、デザートとして仕えなくもないな。華のある味じゃないけど、その分、飾らない家庭でのくつろぎにちょうどいいというか。


 ちなみに、説明書を読む時、注意しておきたいポイントがある。

 別の料理名が入っていることが多いのだ。


「ノルアルド・フェラン・リョクチャ・バルコラードリィ!」


 本当に緑色の飲み物が出てきた。

 だが、見た瞬間、俺の脳裏に嫌なものが浮かんだ。

「これはサンハーヤ特製の『苦汁くじゅう』じゃないのか!?」


 もちろん、色が偶然一緒というだけの可能性はある。むしろ、そのほうが可能性として高い。

 しかし、抵抗があるかないかと言うと、それはある。

 まず、説明書から読むか……。


=====

ご注文の品をお送りいたします。

料理名:緑茶

緑色をした日本のお茶の定番ですが、多少の苦みがあったりして、とっつきにくい部分がないこともないかもです。実際、日本でも普段はほうじ茶飲んでますって人も多いので。しかし、お茶はとにかく奥が深いものです。甘いお菓子とともに、ぜひ一度チャレンジしてみてください!

=====


 どことなく注意書きっぽいな。まあ、これを食べるのはニホンとは違うところに住んでる俺みたいな異世界人だから、しょうがないけど。


 しかし、かなりコップが熱い。ふうふう冷ましながら、ずずずっと飲む。

「あっ、なるほど。こういう味か……」


 飲めなくはない。少なくとも渋いわけじゃない。大人の苦みってやつだ。しかし、この味を冒険者が好むかというと、そこはわからないな。それと、店のコンセプトともちょっとずれる気がする。もっと、客人を丁寧にもてなす時に出すものというか。


「これは世話になったドワーフのディーズをもてなす時にでも使ったほうがいいかもな」

 とりあえず、『苦汁』よりは圧倒的にちゃんとした飲み物なので、やっぱり『苦汁』はダメだ。あれこそ唯一無二のものだ。

 ほかの世界の奴が『苦汁』を召喚して悶絶しないことを祈ろう……。



 俺がダイニングに戻ると、三人がカードゲームに興じていた。


「わー! また負けました! リルハさん、神だからってインチキしてませんか?」

「するわけないでしょう。サンハーヤさんが顔に出すぎるだけです」

「うん、サンハーヤ、顔芸かってぐらいに顔に出る」


 ああ、たしかに二人だととくに盛り上がらないゲームも多いもんな。俺が料理の開発に抜けてても三人いるというのは、かなり大きなことかもしれない。


「みんな、新しいパンができたぞ」


 俺は早速、それぞれ、三つずつパンが載った皿をどんどんと置いた。当然片方がアンパンでもう片方がうぐいすパンだ。


「あれ、何の変哲もないですね……」

 サンハーヤはちょっと不満そうだ。


「俺が何の変哲もないものを出すわけないだろ。食べてみてもらえばわかる」

 そして、サンハーヤはアンパンに手を伸ばして、かじりついて、

「甘ーーーーい!」

 と、盛大に叫んだ。このオーバーリアクション、召喚しがいがあるというものだ。


「武骨なくせして、すごく甘いじゃないですか! これ、人間にたとえると武骨な剣士のふりしてマザコンの甘えん坊ってキャラですよ!」

「たとえが悪いな! それだとプラスの要素ないだろ!」


 レトは黙々と「いい。おいしい」と食べている。よさが伝わりづらいが、食後にそこそこ腹にたまるあんたっぷりのパンを止まることなく食べているぐらいだから、成功と言っていいだろう。


 そして、こうして新しい料理を食べてもらうのは初めてのリルハさん。

 まず、半分に割って、中身を確認してから、片側にかじりついた。


「おいしいっ! 毎日食べても飽きないような、そんな味です……」

 案外、毎日食べてる人もいるのかもしれないな。元の世界では一般的らしいし。


「リルハさんは観念界にあった食べ物は食べてなかったんですか?」

「観念界にあったものは観念なので実体がないんです。なので賞味不可能でした」

 それはちょっともったいないな……。せっかく料理がずらずらあったはずなのに……。


「なので料理名もできるだけ覚えないようにしてました。おいしいって書いてるのに食べられないのも癪でしたし……」

「そこで覚えててもらえれば、すごく助かったのに!!!」


 こんなところで俺にもダメージが来るとは……。いろんなものが絡みあってるんだな……。女神の行動がこうして俺にも影響してくるんだ……。


「でも、これがおいしいのは間違いないですね。パンがたくさん置いてあるところも思い出してきました。料理名ももうちょっと思い出せるかも……」

「ぜひ思い出してください、マジで」


 そして、うぐいすパンも試してもらう。

 こっちも安定した高評価だった。食べてまずいと思うような味じゃないからな。


 これで、朝にパンを売る計画は一段階前進したな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ