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サモナーさんの召喚するだけ3秒間クッキング ~大繁盛! ダンジョン前食堂~  作者: 森田季節
食堂ダンジョン前に開店!

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28 冬じゃなくても甘酒を

 このドリンク、やけに甘そうだな……。

 かといって、あんまり酒っぽさはない気がする。ホットの飲み物だからか?


 早速、説明書を確認する。


=====

ご注文の品をお送りいたします。

料理名:甘酒

冬場を代表するドリンクです。お寺とか神社の門前町を歩いていたら「名物 甘酒」ののぼりを見たことがある人は多いはず。絶対、とくに名物じゃないだろとは思うのですが、ひなびた茶屋で飲むのも、また一興。

ほんのりとした甘さと、少しどろっとした粘り気ある感じがマッチしています。ショウガも入れてありますので、さらにあったまりますよ。栄養価が高いので、健康にもいいとか。長く歩いたあとに飲めば、もうちょっと頑張ろうと思えます。

※なお、この商品はアルコール度数0パーセントですので、お子様でも安心してお飲みいただけます。

=====


「これ、絶妙のチョイスなんじゃないか!?」

 俺は早速、その分厚いコップを取る。熱い! 思った以上に熱い!


 ふうふうと息を噴きかけながら適温にしていく。そりゃ、こんなの飲めば誰だってあったまるだろと思うが、味はどんなんだろう。名前からして甘いことは確実だろうけど、それ以上のことは飲んでみないとわからない。


 あっ、これもぜんざいになんか近い! こう、まったりする方向性のやつだ!

 でも、ぜんざいと違って、どこかスパイシーな要素もある。おそらく、ショウガのせいだな。体がほかほかしてきた。感覚的な問題じゃなくて、どうも本当に発汗している。ショウガ恐るべし。


 俺はわざと裏の勝手口から外に出た。

 これは外で飲んだほうがおいしい気がしたのだ。


 俺の予想は当たった。

 少し風に当たって体が冷えるところに、この甘酒が合う。


 最初は量が少ない気がしたけど、そんなこともなかったな。

 なんというか、本格的に腰を落ち着けて飲むものじゃない。まさにもう一仕事やるぞって感じの飲み物だ。


 これはデザートに出せるかもな。適正価格がわかりづらいけど、酒ってついてるし、銅貨3枚ぐらいでいいか。


 よし早速、明日から出す――――のは念のため、やめておくか。

「酒って名前ついてるし、酒税とらないか、役所に聞いておこう……。訴えられたりして、余計な裁判になるのは勘弁だしな……」


 確認してみたら、お酒ではないことが認められた。あと、冷静に考えたら、異世界の「アマザケ」という商品名で売りに出しても、酒と名乗ってるってなるわけないや。異世界の名称に慣れてきて、「アマイ」は「甘い」ことだと覚えてしまった。


 しかし、この召喚魔法って、どういう仕組みで出してるんだろう……。異世界のものが消えてるのか? けど、それでも説明書が添付されてる理由がよくわからないしな。まあ、考えても絶対わからないことだから、考えないでおくか。



 こうして、「オルフェ食堂」に新規メニューが加わった。


=====

メニュー

ラーメン

ショウユラーメン 銅貨5枚

シオラーメン   銅貨5枚

トンコツラーメン 銅貨5枚

ミソラーメン   銅貨6枚

ギョウザ

ギョウザ     銅貨3枚

スイギョウザ   銅貨3枚

ミソラーメンとギョウザのセット 銅貨8枚

他のラーメンとギョウザのセット 銅貨7枚


ギュウドン    銅貨4枚

タコヤキ     銅貨4枚

トンジル     銅貨3枚

ギュウドン・トンジルセット   銅貨6枚

カレー      銀貨6枚

ウメボシ(3ヶ) 銅貨2枚

甘味

ゼンザイ     銅貨5枚

アマザケ     銅貨3枚

※スマイルは廃止しました。ご了承ください。  

=====


 まず、お客さんの最初の反応は「あっ、デザートがある!」だった。

 女性客の声が多く聞こえた気がするし、やっぱり男の冒険者はまだ抵抗があるんだろうか。


 ただ、アマザケとは甘い酒を意味する言葉ですとサンハーヤとレトが説明したのを聞くと、男からも注文が入ってきた。

 それと、そもそも謎の料理はとりあえず注文するというのをルールにしている連中もいるので、そういうところからはきっちりオーダーが通る。


 デザートを入れることで回転率に関してはどうしても落ちる部分があるが、それはこの際、目をつぶることにしている。

 店舗をしっかり持った以上、食ったらすぐに出ていくという空気も薄らいでいるし、初期の頃と比べると客席にも余裕はある。冒険者だけじゃなく、王都の住民みんなの憩いの場にしてもらったほうが、結局利益にもなる。


「ぜんざいって、これ、黒いわね……」

 女性客のそんな反応があるが、レトが「びっくりするけど、甘くておいしい」とフォローを入れていた。

 その言葉を信じた女性客が食べて、「ほんとに甘い! でも嫌な甘さじゃない!」とすぐに評価を口にする。

 それを聞いた別の客からオーダーがまた入る。いつもながら、どんな料理か想像がつかないから、まず様子を見る層がいるのだ。


 一応言っておくと、召喚したものをなんでも出してるわけじゃないからな!? ちゃんとそれなりに出るメニューになるか考えてから入れてるからな? 物珍しさだけで押してないぞ!


 甘酒のほうはタイタンみたいなおっさんの冒険者が、ちょびちょび飲んでいた。大柄な人間でも熱いものは熱いからな。一気飲みはできないぞ。


「おい、これ、酒じゃないかもしれないけど、体はあったかくなってくるな! 悪くねえぞ!」

 よし、いい反応だ!


「おい! もっとくれ! もう一杯だ!」「こっちも甘酒もう一杯!」

 そんな声が上がった。


 えっ……。そんなぐびぐび飲むものじゃないと思うんだけど……。まあ、こっちとしては儲かるからいいけど……。


 これは甘酒は酒の代替飲料として広まるかもしれないな。製法は俺しか知らないどころか、俺すら知らないから偽物も作れないと思うが。


 ただ、酒と決定的に違うところがあった。


「よし! 体も熱いし、浅い階層でもう一稼ぎするか! 明日のメシ代ぐらいは稼げるだろ!」


 おっさんの冒険者が気合いを新たに立ち上がる。

 そう、この甘酒なら酔うことはないし、さらに頑張るぞって気持ちになれるのだ。

 労働意欲を高める素晴らしい飲み物と言えるだろう。

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