第37話 先輩には逆らえません
放課後になった。昼休みのあの有栖川とのやり取りの後、有栖川は生徒会室に呼ばれた為、俺は先に教室へと戻った。
教室へと戻る途中は、頭の中が悶々としていて、それが放課後まで続いた。
「それじゃあ、一緒に帰りましょう。ハヤテ、久しぶりにカラオケに行きましょう」
「「「「………ん?」」」」
「おう! 結女、少し待っててくれ。直ぐに帰る準備をするからな」
「「「「………は?」」」」
何だ? 姫夏とよもぎと愛花梨と凛のヒロインズが、俺と結女のやり取りを聴いて……俺達の方へと向かってきたんだがぁ?!
「ちょっと……なんでお互いに下の名前で呼び会ってるの? 秋崎君」
「何したん?何したん?何があったね? ハヤテ君」
「幼馴染みに隠し子は駄目だよね? 怒らないから、何があったか教えてくれるかな? ハヤテくん!」
「…………浮気は駄目ですよ。はー君!めッ!です」
「ちょっ、ちょっと! アンタ達。《《ハヤテ》》が困ってるでしょう! 取り囲むなんて可哀想よ!」
ヒロインズが俺を囲んで、何故か俺に叱って来る。まるで数日前の太一みたいな状況だな。
そうかこれがハーレムというやつか……圧が強いな。そんな中で結女は俺を心配して、ヒロインズに文句を言ってくれている。
優しい奴だな。
「……昼休みになにか進展した?」
「最近発情結女さんでしたからね。やると思ってたなぁ」
「結女ちゃん……ううん。ごめん。今の私には何も言えないね」
「……以外にライバルが多いですね。まぁ、この世界は重婚が可能なので、なんの心配はありませんけど」
「……とりあえず。皆退いてくれよ。今日はこの後、結女とカラオケに行くんだらさ」
「そうよ! カラオケに行きましょう。ハヤテ!」
「何を言ってるの? 放課後は私が秋崎君と一緒に行動するって言って……」
ピンポンパンポーン~!
『生徒会より連絡します。1年A組の有栖川さん、姫夏さん、椎名さん、よもぎさん……東雲…さんは至急。生徒会室に来て下さい。生徒会からの呼び出しです。繰り返します。生徒会より連絡します。1年A組の有栖川さん、姫夏さん、椎名さん、よもぎさん……東雲…さんは至急、生徒会室に来て下さい。生徒会からの呼び出しです』
ピンポンパンポーン~!
「なんだこの放送? なんで途切れ途切れに……」
「はぁ?! また、呼び出しなの? 会長~!」
「………私達まで?」
「怪しすぎるね。しかも、なんで私だけ下の名前で?」
「私も?」
「………生徒会ですか」
ヒロインズはさっきの放送でなにやら困惑気味だ……これもしかして、この修羅場から逃げるチャンスだったりしないか? 有栖川とは後で、学校を出てから合流すれば良いしな……
(とういうわけで……ドロン)
俺は椅子から静かに立ち上がると、音を殆ど立てずに教室を後にした。
「全くもう~! せっかくのハヤテとの放課後デートなのに~! 会長のおバカ~! ハヤテ、悪いけど教室で少しの間、千夏と一緒に居てくれな……て、ハヤテが居なくなってる」
「「「「え?」」」」
◇
《校舎裏の休憩所》
「結女の用事が終わるまで、ここで身を潜めてるかな」
「何を身を潜めるって? ハヤテっち」
「ん?……どわあ? 美鈴先輩?! いつの間に後ろに?」
「ん~? 私は夢魔だがらね、浮遊してハヤテっちの後ろに回り込めるのさ~!」
「夢魔?……それって、美鈴先輩がサキュバスってことですか?」
「サキュバス?……ん~? 何それ?」
「いや、ヒロインズがそう言って……あれ? 視界が……ぼやけて……る?」
「ヒロインズとか何の単語? 受ける~! それよりもハヤテっち、私にちょっと付いて来てよ。私さぁ~! ハヤテっちに用事がある……てっ! 何倒れてるの? ハヤテっち! だ、大丈夫? ちょっと!」
「……美鈴先輩。すみません……なんか意識が朦朧としちゃって……」
「……てっ! 寝ちゃったの~? 私、サキュバスとかじゃないんだげとさ~!……これじゃあ、口説けないじゃん……もう。ハヤテっち、しっかりしろ~! 看病してやるからさ~!」




