第35話 警戒心ゼロは駄目!駄目!
ペチペチペチペチペチペチ!!
「起きなさい! 秋崎。目覚めるのよ! 秋崎~!」
有栖川の叫び声が聞こえるな……うるさい奴め。
「ん?……ここは……ロッカールーム?」
「そう。テニス部のロッカールームだよ。秋崎君」
「……姫夏? 何か顔色良くなったな。良かった」
「う……うん、抜いたからね。心配してくれてありがとう。秋崎君」
何だ? 気まずそうな顔をしながら恥ずかがってる。何を抜いたんだ?
「秋崎~! 無視するんじゃないわよ~! 私がせっかくペチペチペチペチしてるんだから、ちゃんと反応しなさい!」
有栖川の顔が真上にある。どうやら俺は有栖川の膝の上に寝かされて、顔を優しくペチペチ去れているみたいだな。
「あの、有栖川さんや……全然痛くないんだが」
「うぅ! あ、当たり前でしょう。私が秋崎に危害を加えるわけないんだからね」
……何処のツンデレヒロインだよ。いや、有栖川はツンデレヒロインか。
「それよりもハヤテくん。あの先輩には近づいちゃ駄目だよ」
「そうです。そうです……あれはビッチなんですよ。はー君」
愛花梨と凛がロッカールームにあるベンチに座っている。何だ? 2人も一緒に俺を眠らせたたのか? つうか……何で美鈴先輩に近づいちゃ駄目なんて言うんだ?
「………何でだ? あんな良い先輩他にいな……」
「ニャア!!」「ふんっ!」
「ごはぁ?! お前等、何すんだ?」
有栖川と姫夏が俺の脳天をチョップしやがった。少し痛い。
「洗脳されかけてんじゃないわよ。アホ崎」
「そうそう……催眠術ね。あの先輩。本当はサキュバスとかじゃないの? 凛」
なんで俺はこんなに怒られてんだ? それに美鈴先輩がサキュバス? そんな阿呆な話があるか。
ここは恋愛ゲーの世界だろうが。いちおは現実世界だろう。
そんなファンタジーな話があってたまるか。
「春風先輩がサキュバス……? 凛ちゃん。そんなのあり得ないよな?」
愛花梨が訝しむ表情をしながら凛を見つめている。
「春風美鈴がですか?……いえ。流石にそんなファンタジーみたいな事があるわけ……あり得るかもしれません」
「あり得んのか?」
「「「あり得んの?」」」
俺とヒロインズが一斉に凛を見つめて驚いた声を上げる。
おいおい。この世界に本当にサキュバスなんて入るのかよ。
「……例えば、その人特有で持つフェロモンを自在に操れたり。人の心の動きを熟知していれば、手篭めにして快楽に落とすなどが可能な技術の用なものは、昔からありますね」
「技術?……それを使って春風先輩は太一にあんな仕打ちをしたの?」
「いえ、あれは藤崎太一がヤリ○ンくそ野郎なだけですね。愛花梨さんへの浮気もしかり……結局の所、あのヤリ○ンくそ野郎は、愛花梨さんの身体が目当てだっただけですね。私の調査の結果では」
凛の奴、こういう時はハキハキと喋るのな。仕事モードとか言うやつか? つうか太一の事をヤリ○ンくそ野郎とか……酷い言いようだな。
ここには太一の幼馴染みの有栖川と恋人の愛花梨がいるのに。
「あのヤリ○ンくそ野郎は本当に最低だったのね。なんであんなの好きになったのかしら?」
「……私、もう太一くんとは別れるよ。最初から可笑しいと思ってたんだ。告白が成功して、両想いになったと同時に私にキスして舌を入れてきたんだよ」
「うわ~!なによそれ~! 気持ち悪いわね~! 私もこれからは近づくの止めるわね」
……2人とも凄い悪口を言ってるな。まぁ、太一の最近の行動は、少し気持ち悪くて可笑しかったからな。その反動だろうか?
「………とりあえず。太一君とは距離を置く……というか。もう関わらないにしようか。変な催眠術もかけてくるんだしね」
姫夏がそういうと。スマホを取り出してストレージ画像から何かの動画を再生された。
「何だ? その動画」
「ん? 変態さんの証拠動画かな」
「変態さん?」
動画が再生された。その動画には空き教室が映し出されていて、姫夏と太一が居た。
〖藤崎君。私をこんな所に呼び出してどうしたの?〗
〖うへへ! 六花~! 少しお願いがあるんだ〗
〖お願い? 何?〗
〖この五円玉を揺らすからさ。少しの間だけ、ジーッと見たいてほしいんだよね〗
〖五円玉?……私、部活で忙しいんだけど〗
〖つっ!……直ぐに終わるから待ってろよ。いいだろう!〗
〖ちょっと……なんで声をあらげるの?……分かった。少しの間だけだよ〗
〖ウヒィ!……ありがとう。六花………じゃあ、貴女はだんだん僕に夢中になって抱かれたくなる~! 貴女はだんだん僕に夢中になって抱かれたくなる~! どう? 効いた? 僕の催眠術は効いたよね? 六花〗
〖………ちょっと! 胸を触ろうとしないで。気持ち悪い……〗
〖ぎゃあ?! ちょっ、手掴まないでい、痛いって!!〗
〖藤崎君。君、男の子でしょう?……弱すぎ。他に様がないなら。私はもう行くね………催眠術とかよく分からないけど。変な事はそろそろ止めた方が良いよ。恋人の愛花梨も悲しむと思うし……じゃあね〗
〖な?! ちょっと! 待ってよ。六花! 前みたいに僕に夢中になってよ! 六花! ちょっと!六花ってばぁ!!〗
「おしまい」
「「「「………気持ち悪る」」」」
俺とヒロインズは六花が再生した動画を見て、おなじ感想を述べた。




