第34話 朝の部活はブンブン
姫夏が半泣きになりながらテニスコートで部活を頑張っている。
その相手は……銀髪をリボンでポニーテールに結んだ可愛らしい女の子だ。
体操着の色からして、1学年上の先輩か?
それと気になるのが、有栖川の奴が気持ち悪い笑みを浮かべているのが凄く気になるんだよな。少し話しかけてみるか。
「お~い! 有栖川、何てんだ?」
「ニャアッ! 綾崎と……愛花梨と凛も? 何でここにいるのよ?」
「いや、それはこっちのセリフなんだけどな」
「凛ちゃん。六花ちゃんの試合相手の先輩って……」
「あのひとですね。間違いありません。早くはー君をここから移動させてあげなければ、危険です」
「そ、それはそうだけど……あの先輩。こっちに来てるよ」
「……はい?」
なんだ? 愛花梨と凛の奴。なにをこそこそ話し合っているんだ?
「あ~れ? 君達。テニス部に興味あるの~? 入部希望かな~?」
「うぅぅ。お尻にあんな物があったら上手く動けるわけない。久しぶりに負けた。結女の馬鹿……な?! またリズムが高くなって……ああくぅ。結女……止め」
「「?!」」
さっきまでテニスコートで激しいラリーを行っていた。姫夏と……何先輩だ? この人とは? 銀髪に褐色肌で快活そうな美人って感じだな。さぞかしモテるんだろうな。
「あ~! 私の事が気になる? 気になっちゃう? 私好みのイケメン君」
「あ……いえ。綺麗な人だなと見惚れてまして」
「「「「は?!」」」」
……何で先輩を綺麗な人だって言っただけで、凄く機嫌が悪くなるんだよ。このヒロインズは。つうかこの先輩、どっかで見たことがあるんだよな。
「アハハ! 君~! お世辞が上手いね……私の名前は、春風美鈴。処女だよ」
「「「「は?!」」」」
すげえ自己紹介だな。おい……そして、それに凄い反応するなヒロインズは。
「春風先輩ですか」
「そんな他人行儀な呼び方はいいって~! 気軽に美鈴ちゃんって呼んでよ。ハヤテっち」
「いや……そういうわけにはいかないですよ……て、あれ? 俺。美鈴先輩にまだ名前を教えてない筈じゃ…」
キーンコーンカーンコーン~!
美鈴先輩にそんな事を聞こうと思ったんだが、タイミング悪く朝のチャイムが校内に鳴り響いた。
「あ~! 君の名前ね。そこのお隣に立っている凛ちゃんに前に聞いたんだ~! ねえ? 凛ちゃん」
美鈴先輩が凛にニコニコ笑顔で話しかけたが、目が笑っていないように見えた。
「…………はい、そうですね。《《美鈴》》先輩」
「フッ……だよね~! あ~! 久しぶりにテニス部に顔出して部活したら疲れちゃったわ~! 六花相手してくれてありがとうね~! 私、教室行くからバイバイ。ハヤテっち! 今度、時間がある時にゆっくりお話しようぜ~!」
「「「「だ、駄目!」」」」
何故、そこでハモるんだヒロインズ。
「あ! はい。分かりました。暇な時にお願いします」
「おお! 言質取ったり~! 約束だよ。ハヤテっち! またね~!」
美鈴先輩はそう告げるとテニスコートから颯爽と去って行った。
「……何か、快活で優しそうな先輩だったな。な? 有栖が……もがぁ?!………ガクッ!」
お、おい! これ……凛お手製の超強力睡眠薬じゃねえ……か。
「か、確保~! テニス部の部室に連れ込むのよれ」
「「「はい!」」」
こうして俺は何故か怒り狂うヒロインズにどこかに連れて行かれた。




